概ね順調に研究を進めることができた。また,期待した成果を上げることができたと考えられる。 本研究は研究期間内に三つの課題について明らかにすることを目指した。課題①:グループ談話の傾向の調査,課題②:グループ談話の様相の類型化と創造的なグループ談話に必要なコミュニケーション力の検討,課題③:グループ学習への効果の測定,である。これらの調査及び検討,効果の測定を行った結果,予想していた以上の成果を上げることができた。 特筆すべきことは,グループ談話を創造的なものにするために必要なコミュニケーション力として,①談話の参加者を尊重する力,②談話の価値を共有する力,③談話の参加者間で見通しを立てる力,④談話の参加者間で発話機会を提供し合う力,⑤談話中に情報を思考操作する力,⑥談話中に自分の考えの根拠を点検する力,⑦談話中に問いを更新する力,⑧談話中に自分の考えを修正する力,⑨複数の方法で説明する力,⑩共通の語彙を使う力,を明らかにできたことである。このことは,これからの教室でのコミュニケーションの指導方法に大きな示唆を与えるものだと考えている。 「児童生徒のグループ談話におけるコミュニケーション力の習熟方法の社会言語学的研究」の総括として,児童生徒のグループ談話におけるコミュニケーション力の習熟方法には,次のような教師の積極的な関与が必要であることが明らかになった。①グループコミュニケーション力の学習として言語化(可視化)すること,②グループコミュニケーション力をはたらかせる切実性のある学習課題を設定すること,③グループコミュニケーション力を育成する計画を立てること。近年の学校教育現場ではグループで学習する機会が激増しているが,小中学校の教育現場はグループ談話を充実させる方法をもたない現実がある。本件研究がグループ談話を充実させる研究の一助となると考えている。
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