<研究成果> 医師に対するインタビューデータの追加が最終年度に可能となり、専門科複数の開業医を対象にデータ補充に注力した。内容はこれまで通り、医師と患者の診療談話音声を聞いてもらい、全体的な評価および会話の中断をもたらす「触診(血圧測定及び心音聴診)」の「メタ言語」的意味について、医師の解釈 をインタビューで聴取するナラティブ・データの面談方式で録音を行った。 本年度の医師インタビューにより、医師のメタ言語の解釈や行為の意図の多様性がより明確に示された。 前年度までの成果として、医療コミュニケーション教育担当の大学医学部医学教育センターの医師から得られたインタビュー・ナラティブで示された「触診」のメタ言語解釈として、 3つの可能性:1)診察室外で事前測定した患者の血圧を医師自身の手で再確認する、2)医師による血圧測定及び心音聴診の身体接触を通して、患者との良い関係 を構築する、3)患者による同一トピックの発話と繰り返しを中断する、という「医師フレーム」の多声性が、改めて認定された。これまで示された医師の「3つの解釈フレーム」に基づき、他医師のインタビュー・ナラティブを分類すると、3グループ:1) ネガティブな解釈(フレー ム3)、2) ポジティブな解釈(フレーム2)、3) 不明、と医師間でも異なることが示された。これまでと同様「医師フレーム」の「多声性」と「多様性」が強化される結果となった。本研究成果は、2019年6月刊行の書籍に収録される見込みである。 <研究の意義> 医師の発話及び非言語的振る舞いに対する解釈について、発話者 本人でなくても専門家である他医師による解釈ナラティブを分析することで、医師のメタ言語の多層的解釈が明らかになりつつある。特に本年の追加インタビューデータにより、1)医師の専門性による視点の明確な相違、2)性差による影響の可能性が認められた。
|