研究課題/領域番号 |
16K02699
|
研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
高梨 美穂 多摩美術大学, 美術学部, 准教授 (70756155)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 言語学 / ダイクシス / 直示動詞 / usage-based model / 使用依拠モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、直示動詞である「行く」「来る」の母語習得のメカニズムを明らかにし、使用依拠モデル(Tomasello2003)による 、言語と一般認知能力との関係解明に貢献することである。「行く」「来る」は、直示動詞であり、基本動詞でもあることから、意味の範囲も広く、6歳でも完全には習得されない(正高1999)といわれており、習得過程、習得が完成する時期については明らかになっていない。 従って、本研究では「行く」「来る」はどのような過程を経て習得し、その完成はいつ頃なのかを明らかにするべく調査を行っている。研究方法は、コーパスによる研究と、ビデオ実験による研究の2つである。 平成29 年度は、主として、コーパスによる分析を行った。コーパス分析に関しては、国立国語研究所『言語教育研究部資料 幼児のことば資料』およびCHILDESを用い、インプットとアウトプット双方の質的分析を行った。平成29年度現在では、4歳までのデータのコーディングと質的分析がほぼ終了している。主として本動詞に加えて、補助動詞としての「行く」「来る」の分析を行った。本動詞では、「行く」のほうが「来る」よりも初出も早く使用頻度も高かったが、補助動詞としての「行く」と「来る」ではそれとは違う結果であった。補助動詞「行く」「来る」はほぼ同時に現れはじめ、頻度は補助動詞「来る」の方が多かった。これには補助動詞「来る」のほうが「行く」よりも語彙としての種類が多く、また補助動詞「行く」「来る」の習得は、互いに関わり合っているためだと考えられる。現在、その成果を発表すべく、学会発表の準備に取り組んでいる。 習得には遊びを通しての学習が見られるため、子どもが触れる機会の多い媒体である絵本、童話にあらわれる「行く」「来る」の分析も併せて行った。こちらはもう少し分析、考察を進めた後、学会にて発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度に予定していた研究協力依頼を行っていた機関での実験が、機関側の問題により実施が難しくなったため、別の機関と調整を行い、実験を実施した(平成28年度、平成29年度)。その際の調整に時間を要し、予定していた実験の予定計画が後ろ倒しとなったため、やや遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
コーパス分析がほぼ終了したため、平成30年度はその成果を学会等で発表する予定である。その後、論文にまとめる。 実験データの収集がまだ残っているため、実験および分析を行う。8月中に実験を終了するように進めている。その後、実験データの分析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に予定を変えてコーパス分析から始めたため、それを完了すべく平成29年度も引き続きコーパス分析を優先させた。よって、ビデオ実験を後に行うことになり、計上していた人件費・謝金等を30年度にまわす必要性が生じた。 (使用計画) ビデオ実験を主に平成30年度に行う。そのため、平成29年度に計上していた人件費・謝金を使用する。また、実験を一部外部委託するため、平成29年度に計上していた旅費を一部人件費・謝金に充当する予定である。 当初予定していた情報収集、学会発表を平成30年度に行う。そのため平成30年度の旅費に充当し使用する予定である。
|