研究課題
本研究の目的は、直示動詞である「行く」「来る」の母語習得のメカニズムを明らかにし、使用依拠モデル(Tomasello2003)による 、言語と一般認知能力との 関係解明に貢献することである。「行く」「来る」は、直示動詞であり、基本動詞でもあることから、意味の範囲も広く、6歳でも完全には習得されない(正高 1999)といわれており、習得過程、習得が大人母語話者と同様になる時期については明らかになっていない。従って、本研究では「行く」「来る」はどのような過程を経て習得し、大人母語話者同様の理解を示すのはいつ頃なのかを明らかにするべく調査を行っている。研究方法は、コーパスによる研究と、ビデオ実験による研究の2つである。最終年度として2019年度は、ビデオ実験:(1)「行く」「来る」の習得完成の時期調査実験 (2)「行く」「来る」の習得と、心の理論との関係調査実験 によるデータ分析を引き続き行った。その結果については、一部を国際学会で発表した。コーパス分析については、2018年度から取り組んでいた、子どもを対象とした絵本や童話の中での「行く」「来る」の使用に関する分析結果を論文にまとめた。こちらについては研究発表での意見を踏まえ最終稿とする。これらの研究結果であるが、ビデオ実験の結果からは、小学校2年生程度まではまだ「いく」「来る」の使い分けに揺れが見られた。小学校5,6年(10才-12才)になるとほぼ大人と同様に、「行く」「来る」を使い分けられることがわかった。ただし、個人差も見られた。また、子ども対象の絵本・童話には、子どもを対象とした文章からは移動を意味する「行く」「来る」の使用が大半を占めており、大人対象の文章での「行く」「来る」の使用とは異なっていた。しかし、子どもの発話と絵本・童話での「行く」「来る」の使用については一定程度の関係性が認められた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
多摩美術大学研究紀要
巻: 34 ページ: 137-146
Book of Conference, International Cognitive Linguistics Conference
巻: 15 ページ: 152
https://www.miho-takanashi.com/study.html