研究課題/領域番号 |
16K02707
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
松本 亮 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (30745857)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フィールド言語学 / シベリア少数民族 / ネネツ語 |
研究実績の概要 |
本年度の学会活動においては、学会は日本シベリア学会へ参加し、シベリアをフィールドとする研究者との交流および情報交換を行う。特に、研究対象地域が同じヤマロ・ネネツ自治管区である文化人類学の研究者とは具体的な調査地の情報を得られた。ネネツ族だけでなく、近隣民族であるハンティ族に関するものも得られ、今後の研究の展望として、接触可能性のある他の周辺民族言語へのアクセスの一つの手段としたい。 フィールド調査については、3月に2週間ほどロシアへ赴いた。シベリアの諸言語に関する文献はモスクワよりもサンクトペテルブルクの国立図書館がアクセスも蔵書数もよいため、サンクトペテルブルグを調査地に加えた。今回は、ネネツ語の語彙をまとめた資料のコピーを入手し、研究課題の目標である辞書作りの参考としたい。また調査期間中は、ほぼヤマロ・ネネツ自治管区に滞在した。昨年の調査にて知り合ったインフォーマントの助けを得て、ネネツ族の村へ行き、さらにそこを拠点にツンドラにチュムを建てて生活をするネネツの家族を訪問した。実際の生活を知るとともに、短い発話テキストを録音して収集した。インフォーマントの助けを通してテキストの文字起こしを行った。これらは文法教科書に載せる例文および読みテキストとして使う予定である。将来的にホームステイ型のフィールド調査ができればより詳細なデータ、動画資料などもお詰めることができるだろうが、その第一歩を踏み出せたと言える。 ネネツ語に関しては比較的順調にデータが集められている一方で、エヴェンキ語に関しては協力してくれるインフォーマントがうまく進まず停滞気味である。 論文や学会発表については時間的制約から手が回らなかったが、いくつかの研究会にてネネツ語の文法書整理、ツングース語族とウラル語族の言語地理的発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
様々な大学や専門学校での非常勤講師としての授業が多くなり、研究に費やす時間や体調を用意できなかった。 ネネツ語に関しては、ネイティブのインフォーマントや協力者を得て、実際に文献資料や発話データ、文法調査などを行うことができ、比較的進んでいると言える。一方でエヴェンキ語に関しては、当初予定していたインフォーマントが亡くなったことからリカバリーができていない。ロシアへのフィールド調査も、エヴェンキ語のネイティブと多く接することができ、コンタクトを続けてインフォーマントとして依頼できるような場所がない(話者数の少なさもさることながら、母語保持率が大変低い)ことも大きな理由だ。
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今後の研究の推進方策 |
3年のうち2年が経過したが、調査基金のおよそ半分しか執行できていないことから、1年延長することによりあと2年で目標と達成出来るようにしたいと考えている。 2018年度は所属研究機関も昨年度までと比べると安定したところであり、教育に必要なエフォートも抑えられると思われる。従って、研究にかける時間も計画的に確保できると予想される。最終目標である文法教科書や簡易辞書の到達度(入門レベルか、より参照文法に近いようにレベルをあげるか)を調整しつつ進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加する予定であった言語学会が、春の大会は時間的に参加できず、秋の大会は関西圏で研究費を使う必要がなかった。そしてロシアへの渡航調査に関しても、時間的制限から2週間だけとなり、また受入研究期間の執行基準から支出が少額に抑えられたことが大きい。
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