インドネシア共和国のスラウェシ島およびその周辺の島にはいずれもオーストロネシア語族に属する10語群が分布している。本研究は平成28年度から平成30年度の3年間で、10語群中の非フィリピン系のトミニ・トリトリ語群、カイリ・パモナ語群、サルアン・バンガイ語群、ブンク・トラキ語群、ムナ・ブトン語群、ウォトゥ・ウォリオ語群、南スラウェシ語群間の系統問題、現地研究者との論集の発行等を目的としていた。そのため平成28年度にはゴロンタロ州を訪れフィリピン系と非フィリピン系の語群を弁別するための資料を収集した。平成29年度には中スラウェシ州の西部のパル、東部のルウックを訪れカイリ・パモナ語群とサルアン・バンガイ語群の資料を収集した。 平成29年に本研究の基準としたSILのEthnologueが大きく変わった。このことは本研究の前提が変わってしまったことを意味する。そのため、平成30年度はフィリピン系・非フィリピン系の系統問題を中心に日本で研究を進めた。また、研究期間を1年延長する手続きを行った。 平成31(令和1)年度はスラウェシの言語全体におけるフィリピン系・非フィリピン系の問題を考える上で重要な資料となる北スラウェシ州に分布するサンギル語群、ミナハサ語群の資料収集を行い、東南スラウェシ州でも資料集を行った。 本研究の成果は、日本での3回の学会およびインドネシアでの2回の国際学会で発表された。また系統問題等を論じた論文、インドネシア人研究者との論集として成果を発表した。なお、研究協力者の山口玲子は本書の共同編集者として参画している。さらに、全スラウェシの言語に対するインドネシアで刊行された研究成果をまとめたビブリオグラフィーも出版することができた。
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