研究実績の概要 |
比較構文のうち程度形容詞が主節述部であるもの(例.A is taller than B)についての実験調査が、論文として書籍New Trends in Language Acquisition within the Generative Perspectiveに掲載されて2020年に刊行された。 内容:先行研究では、子供が比較文を誤って形容詞文として解釈している可能性があることが排除できない状況であった。本研究では、比較対象(上記AとB)以外のアイテムを刺激状況に呈示することによりこの問題を解決することができた。また、形容詞文自体も刺激とすることにより、その解釈との比較を行うことにより、子供の比較文解釈に形容詞解釈が以下に関わるかを明らかにすることができた。ここまでは、上記論文の内容であるが、その内容をさらに深めて、数量比較文や、動詞を用いるが比較の概念を必要とする文についても、調査を進めることができた。 結果、6歳児は大人と同様の解釈が比較文、形容詞文ともできるが、4歳児や5歳児はそのようでないことが観察された。全体及び個人データの分析の結果、以下のことが明らかとなった。1)4歳児の正しい解釈は偶然のレベルであったが、統計分析することにより、子供によって、T反応かF反応のいずれかに偏っていることが観察された。また、比較文と形容詞文についての解釈に相関関係も見られた。議論として、程度形容詞が比較文に用いられていることが関与していることを論じ、そのなかで、形容詞が<d, et>でなく<e,t>として解釈されていること、意味理論におけるmaximalityの概念が困難であるという提案をした。 論文執筆の過程で、査読者とのやり取りの中、程度形容詞の解釈と、SI計算が関わる選言解釈における共通点に知見を得て、比較構文とSI計算の関連といった新たな方向に向かうこともできた。
|