本研究課題の目的は、茨城県南東部地域における方言変容の様相を、主に移住者の増加と関連付けて動態的に解明することである。そのために、茨城県南東部に位置する神栖市・潮来市・行方市において語彙を中心に現地調査を行い、その記述を行った。また、神栖市の小学生とその親・祖父母世代を対象に多人数調査を行った。具体的には、以下のとおりである。 1 平成29~令和元年度に語彙の現地調査を行い、その記述を令和2~4年度に行った。神栖市では基礎語彙に基づく調査を、行方市では基礎語彙をもとにした簡易版語彙リストでの調査を、潮来市では俚諺集との比較のための調査を行った。 2 語彙調査と先行研究をもとに多人数調査票(語彙、文法、発音、方言意識の計30項目)及びアクセント調査票(のべ273語・文)を作成し、平成4年度に調査を実施した。多人数調査は、神栖市の3小学校306名(一部の項目は278名)とその家族213名を対象にアンケート形式で実施した。調査の結果、小学生と親・祖父母世代とを比較すると、語彙、文法、発音の項目では、方言の使用・認知が小学生では急速に減少しているが、親・祖父母世代で「使う」の回答が多かった項目では小学生でも「使う」の回答が見られ、一定程度の方言の継承が認められた。一方、方言意識では「方言を残したほうがいい」について、親・祖父母世代の2割強に対して小学生は7割近くが「残したほうがいい」と回答した。アクセント調査は小学生4名を対象に読み上げ式・聞き取り式で行った結果、多くは東京式アクセントで発音されて型知覚もあるが、東京式アクセントと異なるアクセントも観察された。 3 本研究課題の成果の一部を令和4年3月に報告書にまとめて公表するとともに、研究を総括した。報告書では、研究の概要、神栖市の「人体」基礎語彙204項目の記述、多人数調査結果、アクセント調査結果(一部)等について報告した。
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