研究課題/領域番号 |
16K02720
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
川村 大 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (50234133)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 受身 / 自発 / 可能 / 尊敬 / ヴォイス / 受動 / 出来文 |
研究実績の概要 |
本研究は、動詞ラレル形(「動詞+レル・ラレル、ル・ラル、ユ・ラユ」の形)を述語とする文(以下「ラレル文」)における諸用法の史的展開を、構文的特徴を中心に文献調査に基づいて明らかにすることを目指している。特に、中世・近世のラレル文を調査し、3つの点を主たる調査項目とする。(1)いわゆる非情物主語受身文の諸下位類の量的変遷 (2)自動詞による間接受身文の展開過程 (3)自発用法の衰退過程 本年度の研究実施計画は下記のとおりであった。1 資料調査:前年度実施できなかった『天草版伊曽保物語』の調査を完遂する。 2 古代日本語・日本語文法・言語類型論の関連文献並びに注釈書の収集。 計画1は、昨年度に引き続き補助員の適任者を確保できなかったことがあり、残念ながら未達成に終わった。その代り、本年度も計画2に注力することとし、関連する資料文献類を整備し得た。計画の中心をなすデータベースの作成自体は後れがちであるが、次年度以降の調査へ向けての基盤の整備は、一定程度すすめることができたと考える。また、前年度に引き続き今年度も旅費を利用しつつ各種学会に参加、最前線の知見の収集に努めた(日本語学会、日本語文法学会、日本言語学会、日本認知言語学会)。特に、日本言語学会第156回大会では、受身文に関する口頭発表2本のほか、ヴォイスに関するシンポジウムがあり、大いに刺激を受けた。日本認知言語学会第19回全国大会では受身文に関するポスター発表1件を聞くことができた。また、日本語文法学会第19回大会のチュートリアルに受身文の分類に言及するもの(事実上本研究代表者の記事に疑義を呈するもの)があり、その場で意見交換をすることができた。 なお、受身文に関する大きな解説記事1点が公刊された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き補助員が確保できず、また研究代表者の学内業務が増大した(新学部設置の様々な準備作業、部局長就任予定者になったことに伴う会議の増大・引継作業等)ため、当初計画していた調査が未達成に終わった。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者個人で遂行可能な研究の範囲に絞って遂行するという昨年度の方針を維持し、あらためて『天草版伊曽保物語』の調査の完遂を図る。また、各種学会で最前線の知見の吸収に努める。
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備考 |
「10.研究発表」の「図書」欄に記載の『日本語学大辞典』における川村の担当箇所は「受身」(pp.64-66)である。また、このほかに次の成果が公刊できた。 「青木博史著『日本語歴史統語論序説』」『国語と国文学』95巻4号 pp.74-78 東京:明治書院 2018.4
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