本研究は、動詞ラレル形(「動詞+レル・ラレル、ル・ラル、ユ・ラユ」の形)を述語とする文(以下「ラレル文」)における諸用法の史的展開を、構文的特徴を中心に文献調査に基づいて明らかにすることを目指している。特に、中世・近世のラレル文を調査し、3つの点を主たる調査項目とする。(1)いわゆる非情物主語受身文の諸下位類の量的変遷 (2)自動詞による間接受身文の展開過程 (3)自発用法の衰退過程 本年度の研究実施計画は下記のとおりであった。1 資料調査:前年度実施できなかった『天草版伊曽保物語』の調査を完遂する。 2 古代日本語・日本語文法・言語類型論の関連文献並びに注釈書の収集。 計画1は、昨年度に引き続き補助員の適任者を確保できなかったうえ、昨年度来学内の公職に就いているため研究に時間を割くことが著しく困難になったため、残念ながら未達成に終わった。また、計画2も公務に忙殺され、研究所の購入に着手することすら困難であった。かろうじて各種学会(リモート開催のため旅費の支出なし)に参加、最前線の知見の収集に努めた(日本語学会、日本語文法学会)。 なお、科研費の成果を反映した講演1件、辞典の記事1点を成しえた。
|