研究課題/領域番号 |
16K02721
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
加藤 和夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (60137015)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 言語景観 / 方言景観 / 方言の拡張活用 / 方言意識 |
研究実績の概要 |
3年計画の2年目にあたる29年度は、まず、初年度に北陸三県の県庁所在地である金沢市、富山市、福井市での方言景観に関する臨地調査結果を踏まえて若干の補充調査を実施するとともに、同じ県内での方言景観に関する地域差を探るために、石川県では輪島市・珠洲市・七尾市、富山県では魚津市・高岡市・氷見市、福井県では小浜市・敦賀市・越前市・勝山市・大野市での方言景観の臨地調査を実施した。その結果、富山県氷見市をやや例外として、方言の拡張活用としての方言景観の量的側面については、各県の県庁所在地である金沢市、富山市、福井市での方言景観の利用が際立って多いことが明らかになった。方言の拡張活用としての方言景観の多くが、県外からの観光客に向けて地方性をアピールし、観光客にエトランゼ感覚を味わってもらうことが目的と考えられることから、各県の観光客の受け入れ窓口にあたる県庁所在地に方言景観が集中することは納得のいく結果であった。また、北陸三県の県庁所在地の方言景観を調査した28年度の結果から、量的側面において、金沢市での方言景観が最も多く、次いで富山市、そして福井市が最も少ないという実態が見られたが、29年度の補充調査では、金沢市での方言景観の1年間での新たな増加が目立つことも確認できた。2015年3月の北陸新幹線開業後の金沢を中心とした石川県内の観光客の増加と密接な関連があることが考えられた。また、本研究の今一つの課題であった北陸地方の方言意識の変容、そして方言景観とその活用者および受容者の意識との関連性の考察についても、29年度中にアンケート調査やインタビュー調査を実施したデータについて分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の2年目として、29年度は28年度に調査した北陸三県の県庁所在地である金沢市、富山市、福井市での方言景観に関する補充調査も実施するとともに、同じ県内での方言景観に関する地域差を探るために、石川県で3地点(輪島市・珠洲市・七尾市)、富山県で3地点(魚津市・高岡市・氷見市)、福井県で5地点(小浜市・敦賀市・越前市・勝山市・大野市)での方言景観の臨地調査も実施した。また、28年度中に実施できなかった北陸地方の方言意識の変容と、方言景観の活用者および受容者の意識との関連性に関するアンケート調査やインタビュー調査も実施でき、30年度の研究のまとめの準備がほぼ整った。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は本研究のまとめとして、これまでに収集した方言の拡張活用例(方言景観を中心とした)をジャンル別にに分類、整理した資料集の作成を目指すとともに、方言の拡張活用を企画した側の意識、それを見る側の意識についての調査結果や、北陸三県の方言意識の地域差と各県での方言意識の変容との関連についての考察を進め、口頭発表や論文等での公表を目指す。
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