研究実績の概要 |
今年度はこれまでの調査結果の蓄積をふまえ、福井三型アクセント主要3地点(福井県あわら市北潟、坂井市三国町安島、越前町厨)のアクセント概要記述とそれぞれの共時的特性の対照を行い、「福井三型アクセントの共時的特性の対照」『音声研究』20(3), 81-94, 2016年12月(松倉昂平と共著)を著した。そこでは、上野善道 (1984, 2012) で取り上げられた、鹿児島方言の二型アクセントに典型的にみられるという4つの特性、①文節性、②系列化、③複合語の前部要素の式保存、④活用形アクセントの一貫性のうち、①③④を検討した。①文節性については、ほとんどの助詞がアクセント的に独立しない各方言ではおおむねが成り立つ、④と③については、本地方では基本的に成り立たないという結論を得た。また、この論文では、アクセント単位の拡張範囲について比較を行った。厨方言では形式名詞を含むほとんどの付属語がアクセント上独立しない上に、一部の動詞(アル)にまでアクセント単位の拡張が及び、一方、安島・北潟方言では複数文節単位への拡張は見られず形式名詞をはじめ、ある程度の数の付属語が独立性を保つという地域差があることがわかった。 また、実際の調査の面では、福井三型アクセントの分布域のうち、越前町厨のアクセントについては、体系、複合語、外来語等のアクセント調査を行った。従来、男性話者1名だった資料を補うために、女性話者に対して調査を実施し、ほぼ同様の体系であることを確認した。
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