研究課題/領域番号 |
16K02722
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
新田 哲夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90172725)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 三型アクセント / 福井方言 / 南琉球のアクセント |
研究実績の概要 |
日本語諸方言の多様なアクセントの類型のなかで、「三型アクセント」の分布は偏っており、島根県隠岐地方と福井県嶺北沿岸部のみに分布する。琉球語にまで視野を広げると、北琉球の一部と、南琉球の広範囲に三型アクセントが存在していることが、最近の研究で明らかになってきている。これらの三型アクセントの類型上の諸特徴を明らかにすることが三型アクセントの本質を理解にするのに不可欠と考え、今年度は、福井県の三型アクセントとの比較のため、南琉球宮古語多良間方言の三型アクセント体系の解明に取り組んだ。 福井県の三型アクセントのほとんどが音調の下降を弁別特徴とする「下げ核」を有し、韻律単位(文節)に核の位置の指定を行うことで整合的な体系記述ができるのに対して、多良間方言では、「韻律語」の末尾が「低」という弁別特徴を有する「アクセント低核」を指定することで、整合的に記述できることが明らかになった。この「アクセント低核」は、これまで本土方言では発見されてこなかった特異な弁別特徴を有すると考えられる。今後、多良間方言以外にも「アクセント低核」が存在しないかの確認を行うことと、さらに歴史的な系統関係の中で「低核」をどのように位置付けるかが課題として残っている。 また韻律的単位に関しては、福井三型アクセントでは「文節」という「単語」を超えた領域が韻律単位となるが、多良間方言では「文節」は不要であり、「単語」よりも小さな形態的単位である「韻律語」が基本となる。多良間方言の韻律語の音韻的性質と形態論的な性質の関係についての詳細を解明する必要があるが、三型アクセントが類型的に、統語構造依存型(福井三型)と形態構造依存型(多良間三型)に大きく分類できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各方言のアクセント語彙調査に関して、研究計画上あった越前町小樟の話者が高齢のため、また同町厨の話者の体調上理由で長時間の調査が難しくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
各方言アクセントの語彙調査については、別の話者に当たるなど出来るだけ語彙数を増やす。また、三型アクセントを有する福井県坂井市安島方言については、音声データ集を作成することを計画に加える。さらに、三型アクセントの比較研究上、重要な南琉球の多良間方言についても韻律単位を中心に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
福井県越前町のコンサルタントの事情により、調査に赴くことができず、計画していた旅費に余剰が生じたため。
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