研究課題/領域番号 |
16K02732
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
丹羽 哲也 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (20228266)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本語文法 / 名詞 |
研究実績の概要 |
本年度は、いわゆる「文末名詞文」についての研究を深化させた。「文末名詞文」は、通常、「Aは(連体修飾部)Bだ」の形を持ち、AとBが包摂・一致関係にない文の中で、連体修飾部が必須である文を言う(例「彼女は解放された気分だ」)。しかし、連体修飾部が必須であるか否かということは本質的な問題ではないということを指摘し、「形容動作性名詞文」という括りの中で、「連体型」(上例)と「単独・連体型」(例「彼女はもう自由だ」があるということを主張した。かつ、名詞述語を形成する関係名詞において、連体型のみ成り立つもの(例「性格、感じ、様子」)と単独・連用型が成り立つもの(例「気分、仕事、天才」)という区分が、広い範囲にわたって成り立つことを示した。 また、「文末名詞文」(「Aは(連体修飾部)Bだ」)は、いわゆる「カキ料理構文」(「Aは(連体修飾部)がBだ」)と近似的であることがある(例「彼は毎日散歩する習慣だ」「彼は毎日散歩するのが習慣だ」。一方で、前者のみが成り立つ名詞(例「彼は朗らかな性格だ」)、後者のみが成立する名詞(例「事故は過重労働が原因だ」)がある。この名詞の性格の違いは、「Bは何か」「Bはこれだ」という構文が可能か否か、「Bがいくつあるか」という構文が可能か否か、などと連動していることを指摘し、そこから、強対象性の名詞と強性状性の名詞という区分が可能であると主張した。 逆接の接続助詞「が」と「にもかかわらず」の違いはどのようなものか、その構文に対比を表す「は」「こそ」が共起するか否かという問題を考察し、「にもかかわらず」には対比の「こそ」が生起しないことを指摘した。これは、「名詞+は」「名詞+こそ」の振る舞いによって、名詞の性格を考察しようという研究の準備として行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「文末名詞文」という概念を捉え直し、形容動作性名詞文を連体型と単独・連用型に分類し、連体型が成り立つ名詞、単独・連用型が成り立つ名詞という区分が広範囲に成り立つことを示したのは、抽象名詞の分類をめざす本研究にとって意義のある成果であるため。 また、「文末名詞文」を形成できる名詞と「カキ料理構文」を形成できる名詞の相違が他の構文と連動しており、それが名詞の強対象性・強性状性の違いであるという仮説を立てたが、このことが、形容動作性名詞文の下位類型を精密にしていく手がかりとなると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
形容動作性名詞文の下位類、いわゆる「文末名詞文」、いわゆる「カキ料理構文」、「~ことだ」文、「~ものだ」文、あるいは、存在文や所在文、「何、どれ、どこ、誰」など疑問語による文等々、種々の構文の相関を調べ、それが名詞によってどのような相違として現れるかを考察していき、抽象名詞の分類を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書の購入を延期したものがあったため。
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