研究課題/領域番号 |
16K02735
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
福島 みどり (天野みどり) 大妻女子大学, 文学部, 教授 (10201899)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 構文 / のが / のを / 自動詞構文 / 他動詞構文 / 意味拡張 / 接続助詞的 / 逸脱 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「構文」に関する文法的知識が実際に使用される文の生成・解釈において重要な役割を果たすことを、現代日本語の自他構文を例にして明らかにすることである。 本年度は、接続助詞的な意味を表す「のが」と「のを」を持つ文を、自動詞構文・他動詞構文からの拡張と位置付け、それぞれ自動詞構文・他動詞構文の基本的な意味をどのように受け継いでいるか、どこまで元の意味を失っているかを詳細に検討した。 その結果、「のが」「のを」は、状態変遷性を表す自動詞構文の主格・対抗動作性を表す他動詞構文の目的格という格助詞の意味から、二つの事態を「逆接」「対比」の意味でつなぐものへと拡張した実例が見いだせるものの、拡張するにつれ(自動詞構文・他動詞構文の特徴が失われるにつれ)許容度は下がり、動的事象の変化の解釈が得られない状況での「逆接」「対比」用法は受け入れがたいことが明らかになった。 この拡張の結果としての逸脱的な「のが」の文と「のを」の文の意味は接近しているが、「のを」の文が「のが」の文に近づく関係にあることも明らかにした。 「のが」「のを」を用いて動的事態変化ではない、「対比」を表す場合、発話者は自動詞構文・他動詞構文の構文的意味である「変化」の意味を、《対比する》という思考のプロセスに写像して表現したものと考えられ、「に対して」などの表す「対比」とは意味が異なることを明らかにした。「逆接」や「対比」の意味そのものが発話者の主観と言われるが、その「逆接」「対比」を、自動詞構文・他動詞構文の持つ構文的意味を鋳型として主体的に捉え表現するという意味でも、「のが」「のを」文の「逆接」「対比」は主観的であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心である、自動詞構文・他動詞構文の構文的意味の考察として「のが」「のを」の文の考察を深めることができた。収集した実例に基づく考察の他、逸脱的特徴を持つ例に関する許容度調査も行い、自動詞構文・他動詞構文の構文的知識の重要性を論じる基盤が整えられた。
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今後の研究の推進方策 |
構文に関する知識により、逸脱文の生成や解釈がなされていることを明らかにするため、これまでは逸脱文の実例の持つ構文的特徴の残存の分析や、構文的特徴の濃淡に対する母語話者の許容度の変化を調査してきた。特に、後者については、構文的知識を持っていることを前提とし日本語母語話者への調査のみをしてきたが、その比較として、非母語話者の許容度調査等も行う予定である。 補足調査の分析も加え、現代日本語の自動詞構文・他動詞構文の拡張としての、接続助詞的な「のが」「のを」の文の意味生成・解釈に構文的知識が有用に働いていることを最終的にまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、構文の意味の拡がりに関する言語学研究会を開催したが、発表者に対する謝金や交通費が発生しなかった(発表者が他の用務と合わせ来校したため)。 次年度行う、成果発表のための研究発表、著作・論文発表の費用として、次年度使用額を有効利用する。
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