研究課題/領域番号 |
16K02737
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
木村 一 東洋大学, 文学部, 教授 (90318303)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 辞書 / 日本語研究資料 / ローマ字 / ミッション / 印刷 / 出版 / 文体 / 漢字表記 |
研究実績の概要 |
19Cの日本語研究資料からことばの常用性をはかる一環として,諸点からその解析を試みた。 ・1870年代の独和辞書と和独辞書の序文について翻訳を行い,さらに各辞書の代表的な見出し語の訳語比較を試みた。主に訳語との関わりとなるが,対象とした辞書間だけでも大きな変化があったため,それ以後のドイツ語の影響力による訳語の展開を検討していく要がある。また,先行する日本語研究資料からの関わりについても整理を行った。あわせて,印刷,出版に加え,使用される字体,分量(収録語数・頁数など),形態・内容(見出し語・品詞表示・語義・用例・類義語など),構成・体裁(段組・大きさ・巻数・装丁など)といったことも対象とした。 ・キリシタンから現代への日本語のローマ字転写の変遷から,標準日本語の音価について史的観点から整理を行った。母語の影響による異なりと,概念による異なりと,それぞれの事由を体系的にとらえなおすことを試みた。 ・現代の「自然」に該当する外国語と,それに付された日本語の訳語について,16Cから19Cの対訳辞書を中心に,先行研究のとらえ方について疑問となる点などを含め検討を行った。それぞれの文献資料における記述から相互の関連性と言ったことも見出すことができるものと考える。 ・代表的な19Cの文語文の資料を中心に用いることで,漢文訓読文と和文といったものへの当時の意識,また近現代的な文体への展開などについて考察を加えた。 以上,さまざまな角度からの調査・考察となっているが,中心軸となる日本語の指標の整備を継続して行い,上記のそれぞれの事象をひとつの手掛かりに日本語研究資料のさらなる調査・考察を展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19Cの標準日本語の軸を定めるべく,さまざまな日本語研究資料を実見・確認することに努めた。さらに,日本語研究資料をなし得た人物に関わる資料(例,書簡,日記)についても同様である。 国内では京都,福岡で調査と資料収集を行った。また,海外でのシンポジウム発表(中国),資料調査(アメリカ),シンポジウム参加(韓国)では,貴重な意見交換や資料閲覧の機会を得た。何よりも原資料の確認が欠くことができないことをあらためて実感している。なお,収集した資料の解析も並行して行っている。
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今後の研究の推進方策 |
標準日本語の展開については,地域性といったことを忘れることはできない。例えば,日本の印刷技術が確立されていない19C中葉には,上海に渡り印刷が行われている。 これは技術的なレベルの高さを求めたというのが第一の理由である。しかし,そこに橋渡しをした仲介者,さらには例えば九州から,東京への距離と,上海への距離といったことも大きく影響している。 このような事象も含め,実際の出版社,刊行地の実態ということも国内,海外(アジア地域とヨーロッパ地域)と検討を行っていくことで,地域ごとによる標準日本語のありようととらえ方が把握し得ると考える。 引き続き,さまざまな日本語研究資料を実見しながら,それらを整理・記述し,状況が許せば,基本的な資料のデータベースの構築を含めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノートパソコンの購入を検討していたが,資料閲覧の際の機動性を考慮してタブレットの購入を先行させた。そこで,ノートパソコンは次年度の購入とすることとしたい。
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次年度使用額の使用計画 |
携帯性の高いノートパソコンの購入に充てる。
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