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2018 年度 実施状況報告書

発想法による挨拶表現の歴史的変遷と地理的分布の総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K02740
研究機関明治大学

研究代表者

田島 優  明治大学, 法学部, 専任教授 (80207034)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワード感謝表現 / オーキニ / 近世 / 地理的分布 / 歴史的変化
研究実績の概要

平成30年度は、昨年度まで行っていた文献による人情本における挨拶表現について引き続いてデータ収集を行った。それと同時に、フィールワークによる挨拶表現の調査を、愛知県、京都市、佐渡島において行った。愛知県ではおもに尾張北部、京都市においては中央部において伝統的な商家の挨拶表現について、佐渡においては日本放送協会の『方言談話資料』に収められている3地点において特殊な発想法による挨拶表現の調査を実施した。
平成30年度は文献の調査による成果として論文を1本執筆した。フィールドワークによる調査はまだ資料収集の段階にあるため、論文としてまとめられる状況にない。令和元年度にさらに調査をすすめて、その研究成果を公開したいと考えている。
本年度の研究によって次のことが明らかになった。現在関西で使用されているオーキニは、ほぼ同時期に江戸においても使用されていたことがわかった。上方から江戸に伝播したのか、あるいは同時に発生したか今後の調査を待たなければならないが、どちらも「オーキニアリガトウゴザイマシタ」という表現からの省略形である。上方の用例はまだ1例にすぎないが、それも芸子によるものであったが、現在の状況を考えると、今後の調査によって用例は増えるものと思われる。一方、江戸においては若い女性の会話に出てきている。江戸においてはこのように使用されていたが、それが広まらなかったのは男性が使用する相づちのオーキニの影響と思われる。一方上方では、オーキニの前にダンダンという言い方が存在したことによって、副詞による感謝表現が発想法が存在していたことによって、流布したと考えられる。以上が、平成30年度の成果である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成30年度は、フィールドワークを全国各地で実施しようと計画していたが、インフォーマントの選定が思うように進まず、調査が行えたのが、愛知県の尾張地方、京都市、佐渡島だけであった。挨拶表現についてのフィールドワークの方法がまだ確定しておらず、今回の調査においてもかなり手間取った。また1回の調査で明らかにできる点は少なく、何度も訪問する必要を感じた。
フィールドワークとして、他に高知、熊本、山陰を考えていたが、熊本県はまだ復興の最中であり、フィールワークを実施しづらい状況にある、また、フィールドワークを行うしても、間に入って下さる方(研究者、あるいは地元の方)の協力が重要であり、高知県、山陰についてはそのような方を見つけることができなかった。
平成29年度から行っていた文献調査に手間取ったこともその原因となった。文献資料によって論文1本を執筆することができたが、その資料について信頼できる資料を求めて、調査機関に通ったりしたため、フィールドワークの準備に遅れてしまった。

今後の研究の推進方策

令和元年度はフィールドワークを中心とした研究を行う予定でいた。しかし、これまでのフィールドワークを中心とした研究からは、最初期待していた程の成果が得られないのではないかと思われてきた。また調査のための準備(例えば、その地域の方言書の蒐集、そしてその方言書から挨拶表現の抜き出し、そしてその表現が出る場面の設定など)に時間がかかりすぎた。また、方言調査を行うにあたっても協力者が必要である。そのようなことを考えると、計画をしていた方言調査の地域を減らし、減らした分ある地域での調査を綿密に行った方がよりよい成果が得られるように思われる。
そこで、令和元年度においては、方言調査については平成30度に調査を行った佐渡島を中心として、他に四国(特に高知県)や東北(福島県あるいは青森県)の調査に留めようと考えている。
方言調査を減らした分、文献調査に時間をかけたいと思っている。文献調査においては、これまでの調査から考えると、まだまだおもしろい問題が出てくるように思われる。これまでの洒落本や人情本に加えて、噺本や歌舞伎の脚本の調査に取り組み、近世後期の挨拶表現の発想法について様々な点から明らかにしていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

感謝表現に関して興味深い地域における方言調査が予定していた思い通りに進まなかったことによって、調査地点をかなり減らすことになり、調査に出かけなかった。そのために、申請していた旅費が大幅に残り、予算を使用することができなかった。
令和元年度は、計画していた研究の方向性を変え、予定通りフィールドワークも行うが、平成28年度から継続的に行っている文献調査を今後も継続して、それをメインにおくことを考えている。そのために、現在のコンピュータは古いため、データを処理できない点が多いので、平成30年度の残額については文献調査に適したコンピュータの購入とソフトの購入、ま当初計画していたカラープリンターの購入の費用の一部にあてたいと考えている。
また、令和元年度も予定では旅費の予算が中心になっているが、その予算の中からこれまでに購入できなかった文献の購入にあてて、課題に適した新しい方向で研究を続けていく予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] オーキニ考(補説)2018

    • 著者名/発表者名
      田島優
    • 雑誌名

      明治大学教養論集

      巻: 537 ページ: 1-13

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公開日: 2019-12-27  

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