研究課題/領域番号 |
16K02740
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
田島 優 明治大学, 法学部, 専任教授 (80207034)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 感謝表現 / 地理的分布 / 歴史的変化 / 双方向の言語行動 / 鶴岡 / オーキニ / アリガタイ / カブン |
研究実績の概要 |
令和2年度は、最終年度になっており、これまでに行えていない方言調査を実施する計画でいたが、新型コロナウィルスが収束しないために、高齢者を対象とする方言調査を実施することを中止した。それにかわり、江戸期を中心とした文献調査や、かつて行われた方言調査資料並びに各地の方言書から感謝表現の抜き出し作業を行った。具体的には、文献調査では狂言や、浄瑠璃本、洒落本から感謝表現に関する表現や、意識に関する記事を抜き出した。また、方言資料としては、国立国語研究所が所蔵している「各地方言緊急調査」の資料から感謝表現を抜き出した。この作業は国立国語研究所においてしか行えないので、他の時は各地の方言集からの抜き出し作業を行った。 研究成果としては論文3本は提出することができた。1本は方言に関するものであり、2本は文献による歴史的なものである。 方言に関しては、山形県鶴岡市方言に関するものである。令和元年度に鶴岡市の2地点で行った方言調査をもとにしたものである。この2地点は、現在は鶴岡市に属しているが、感謝表現においてはまったく異なったものを使用している。1地点の黒川ではモッケとナントモヨーが、大鳥ではカブンやウレシイが用いられている。周辺の分布からいえば、大鳥の方が古い方言形を残していること。黒川が庄内の新しい方言を使用していることから、庄内がその地域の言語センターであることがわかった。 文献においては、1本は感謝表現が双方向の言語行動になったことを扱ったものである。近松の浄瑠璃によって、カブンが上からの感謝表現になったこと、カタジケナイが双方向の感謝表現として利用されたこと、またアリガタイが男色の世界から広がったことを明らかにした。もう1本はオーキニが江戸で誕生したこと。これはもともとは「オーキニ御世話になりました」から誕生したことを明らかにした。 以上が、令和2年度の研究実績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度が最終年度という点からすると、計画の上ではかなり遅れているといえる。 文献調査においては予定していた以上に進んでいるが、方言調査の面でかなり遅れている。前年度(令和元年度)の遅れを取り戻すために、計画をしていた方言調査は新型コロナウィルスの影響のために、1地点も実施することができなかった。方言調査は高齢者を対象とするため、このような新型コロナウィルスが蔓延している状況での実施は不可能である。研究期間を一年間延ばすことを承認してもらったので、ワクチンの接種状況や、各市町村の判断によって方言調査が可能である地域が出てきたら実施できるように準備しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を一年間延ばしていただいたので、その期間や研究費を有効に活用したいと思っている。 方言調査の面については、この新型コロナウィルスの蔓延状況からすると、来年度中に実施できるかわからない状況にあるが、いつでも調査に行けるように準備をしておきたい。それまでの期間は、その代わりに、これまでに行われてきた方言調査資料(「各地方言緊急調査」の資料)などを活用して、可能なかぎり方言における感謝表現の実態について明らかにしていきたい。 文献については、これまでは江戸期を中心に行ってきたが、感謝表現の歴史をもう一度通史的な立場から眺め直す。そのためには、上代、中古、中世、近世、近代、現代と流れを辿ってみる予定でいる。秋頃から、この研究のテーマである歴史的な立場と地理的な立場とを統合して、日本語における感謝表現とはどのようなものであったのかについて考えていく。 そして年明けには最終的な形として、これまでの研究成果を報告書の形で公にしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
方言調査に関しては、このテーマによる研究を始めた頃(平成28年度)から、調査予定地域が地震や台風の影響などでよって実施するのにためらわれる状況になってしまった。そのため、予定していた地域の数を減らし、少しずつ実施してきた。まだ調査を行っていない地域での調査を令和2年度に実施する予定でいたが、新型コロナウィルスの影響によって調査を実施できなかった。そのための予算が残っている。それに加えて、研究期間を一年間延ばすことにしたことによって、最終年度に刊行する予定でいた冊子の発行を見送ったため、そのための予算もかなり残っている。 方言調査のための予算については、最終年度である令和3年度においても実施できるかわからないので、1、2地点の調査費用を残し、歴史的な面についての調査のための図書や、方言に関する図書の購入にあてる予定でいる。方言調査の実施が可能か否かの状況によって、その予算を変更していくつもりである。 最終的には、方言調査に協力して下さった方や地域へに対して、研究報告書を刊行して発送する予定であり、そのために研究費を使用する予定でいる。
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