研究実績の概要 |
2020年度は研究成果をまとめることを意識して、本研究課題の主たる調査対象である『哲学字彙』に関連した資料に関わる調査及び日本語の語彙の計量的な分析の両面で研究を進めた。『哲学字彙』を初めとした明治期の学術用語に関する記述的研究の結果は「専門語彙集の語彙」及び「明治期におけるドイツ科学用語の受容」という題目で、各々論文集に収録されて刊行された。語彙の計量的な分析では、日本語の品詞構成比率を扱った「樺島の法則」に着想を得て名詞比率を基準とした異なり語数・延べ語数の関数についての論文を改稿した。これは2021年度に、国際的な言語学の出版社であるJohn Benjaminsから刊行される論文集に収録の予定である。また、海外の計量言語学者によって研究されてきた「Menzerath-Altmannの法則」(言語の語、節、文、文章などでより大きな構築物はより小さい構成要素から成るという経験的法則)について、日本語の節、項・付加詞等、形態素の間の計量的関係などを引き続き調査した。語彙の分布に適用させる関数について再検討を行って、Zipf-Alekseev functionに近似させる結論を得て国際的共著論文としてまとめた。この成果はドイツの出版社で刊行された論文集に収録された。また「Menzerath-Altmannの法則」について、同じテーマで異なる文章の複数の新聞記事をデータに用いて比較と分析を行った。これは国際計量言語学会大会(Qualico2021。コロナ禍のため2021年9月に開催延期)に採択され(2020年1月採択結果受理)、「Explorative study on the Menzerath-Altmann Law regarding style, text length, and distributions of data points」という題目で発表予定である。
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