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2017 年度 実施状況報告書

明治期台湾統治資料と国内資料からみた標準語の成立に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K02743
研究機関中京大学

研究代表者

酒井 恵美子  中京大学, 国際教養学部, 教授 (00217754)

研究分担者 中田 敏夫  愛知教育大学, その他部局等, 理事・副学長 (60145646)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード日本語 / 国語教育 / 植民地教育 / 標準語の成立 / 明治期教科書検定
研究実績の概要

昨年度に続き、台湾での明治30年代の標準語成立前のいわゆる口語体のデータを収集整理した。特にこの時期の口語データとして注目すべきは公学校の教科書である。この時期の台湾における教科書検定が内地の教科書検定と異なり、教科書の編纂の一部であったことから、編纂過程を図書審査会の審議記録からさぐり、どのような表現が問題とされたかを探った。もっとも問題が指摘されていたのは、形容詞の活用である。
今回の調査では教科書の編纂者の履歴等を台湾総督府文書から洗い出し、この教科書の編纂を実質的に率いていたのは大矢透であること、彼が渡台直前に上田万年と関係があったこと、『国語教授要旨』『国語話し方教材』も彼の手になることを明らかにした。また、日本での調査からこの草稿が未整理のため閲覧不能ではあるが、保存され、解題が執筆されていることが判明した。以上のことを元に編纂者たちが編纂した内地での教科書の言語調査を進めることとした。上田万年は渡台直前の大矢に台湾の言語教育の改革を期待するという一文を寄せているが、音韻研究の泰斗として大成する大矢の台湾読本類の文体への影響を注意深く解明する必要がある。そのため直接の執筆者である大矢透、杉山文吾の著作物については教科書だけでなく、口語体で書かれた児童向けの読み物『わづかのこらへ』『幼年宝玉』の調査も行うこととした。彼らは著作ごとにかなり異なる文体を用いている。文語文が多いが、低学年用のものや会話文においては異なる種類の文体の口語文が見られる。これが何に由来するものかは未だ不明である。次年度の課題とする。
一方、明治20年代の内地の国語読本の調査は明治20年代の採択率の高いものを五種選んで、言語調査を実施している。その他、大矢の在籍した教育館の教科書も現存するものについては収集を続けているが、コピーが不可能な物も多く、難航している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は明治30年代の植民地資料と内地の資料、特に教育関係史料を用いて標準語成立の過程を探ることにある。植民地資料は初年度『台湾教科用書国民読本』の編纂過程を明らかにする資料を付箋などの欠損や保存時に裁断され文字の判読不能部分などがあったが、現在昭和45年に東京大学史料編纂所に寄贈されたまま閲覧不能になっている史料以外はほぼ全て入手でき、整理し分析も進めることができた。その一部の成果はすでに公表した。
一方、内地の資料の方はデジタル化していない資料が多く、破損の怖れからコピー制限があるもの、閲覧が1ヶ月に1回と限られているものなどがあるため、未だ、収集半ばである。特に内地の教科書検定の実態をよく表していると言われているいくつかの教科書についてかなり難航している。

今後の研究の推進方策

初年度にやや方向修正を行い、その後、明治20年代明治30年代教科書のいわゆる口語文の部分の分析を行ってきた。上記の諸事情のため内地の資料については収集がやや難航している。今後はまず、資料が調い、また、予想外に編纂過程に迫ることが出来た『台湾教科用書国民読本』関係の資料の分析を行うこととし、今年度中に公表することとする。内地の資料については収集を続ける一方、入手しやすいものに一部変更し、できる限り成果を公表すべく研究を続ける予定である。

次年度使用額が生じた理由

計画段階では台湾総督府文書の閲覧収集は有料であったが、現在無料化されているため、その分の経費が繰り越しとなっている。今年度内地資料収集費として使用の予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 台湾総督府文書と日本語教育史研究-『台湾教科用書国民読本』の編纂過程を例に-2018

    • 著者名/発表者名
      酒井恵美子
    • 雑誌名

      「台湾総督府文書の史料論」(中京大学)

      巻: 社研叢書43 ページ: 273-304

  • [雑誌論文] 植民地台湾における教科書検定の性格-明治30年代公学校用図書審査より-2018

    • 著者名/発表者名
      酒井恵美子
    • 雑誌名

      「台湾総督府の統治政策」

      巻: 社研叢書44 ページ: 213-236

  • [学会発表] 「台湾教科用書国民読本」の編纂者たち2018

    • 著者名/発表者名
      酒井 恵美子
    • 学会等名
      第一〇回台湾総督府文書档案学術研討論会
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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