本研究の第一の目的は、連体節内に現れる構文的な特徴を分類し、その特徴と「連体節―被修飾名詞」の意味的なタイプの間に関連性があるかどうかを検討することであった。 「太郎 が/の 飲む酒」「お茶 が/の 入ったグラス」のように連体修飾節内の主体を表す助詞ガとノは交替が可能である。最終年度では、連体動詞句と被修飾名詞の間に格関係が成立している、いわゆる内の関係(寺村秀夫 1975~1978)の連体節において、連体動詞句と被修飾名詞がつくる意味的なタイプ(「関係づけのかかわり」「属性づけのかかわり」高橋太郎(1979))と、ガとノの使用との関係を分析した。 その結果、連体動詞句の動詞にテンスがあり、被修飾名詞と「関係づけのかかわり」にあるときは、動詞句内の主体はノよりもガを用いる傾向にある(「私 が>の 書いた小説」)。連体動詞句の動詞にテンスがなく、被修飾名詞と「属性づけのかかわり」にあるときは、ガよりもノを用いる(「酒 が<の 入ったグラス」)。また、同じ「属性づけのかかわり」であっても、属性の種類(「酒の入ったグラス」(変化の結果の状態)、「つやのある髪」(所有))によって使用頻度が異なる(前者より後者のノの使用率が高い)、という結論を得た。すなわち、ここには「関係づけのかかわり」の「テンスがある」という連体節内の動詞の動詞的な性質と、「属性づけのかかわり」の「テンスがない」という形容詞的な性質の違いが、ガとノの使用傾向の差に現れている。 今後はこれら二つの意味的なタイプにおいて、連体節内の他の要素との共起関係を考察し、動詞が動詞的な性質をもつ場合と形容詞的な性質をもつ場合の、連体節内の構造の違いを明らかにし、連体動詞句分析における「関係づけのかかわり」「属性づけのかかわり」という類型のたて方が、連体節内の構文的な特徴を分析するうえで重要であることを示す予定である。
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