令和元年は、研究実施計画に基づき、以下の研究を行った。 第一に、「機能別・韻律の指標」をもとに、初級学習者への指導に用いることができる「韻律指導の指南書」を作成した。これは、昨年度までの研究で得られた13機能(1. 挨拶(目上)、2. 食事の前のことば、3. 驚き、4. 許可求め、5. お悔み、6. 同情、7. 指示、8. 申し出、9. 呼びかけ、10. 感謝、11. 断り、12. 謝罪(目上)、13. 謝罪(友達))について、その機能を発話する際にはどのような韻律(高さ、強さ、長さ)で話すのかを、学習者に分かりやすい言葉で説明した手引き書である。また、音声指導の経験が少ない日本語教師にとっても分かりやすいように記述することも心がけて作成をした。 第二に、学習者数名に対し、指南書を用いた音声指導(韻律指導)を行った。13機能が含まれる2~3ターンから成る簡単なロールプレイを行い、指導前/後の発話を録音し、比較分析をした。しかしながら、当初予定していた日本語初級学習者に依頼をすることができず、中級~中上級学習者を対象に指導を行うことしかできなかったため、すべての機能において指導の効果があることを証明する、という段階にまでは至っていない。 最後に、音声指導に対する教師の意識を調査した。第二の研究をしているときに、音声指導に消極的な教師が少なくないことに気づいたため、その要因を明らかにすることを目的としたアンケート調査を行った。その結果、アナウンサーのような「正しい共通語」を求める音声指導の方法が教師に心的負担を与えている可能性が示唆された。
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