研究課題/領域番号 |
16K02754
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長野 明子 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (90407883)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 英語学 / 派生形態論 / 形容詞 / 言語接触 / 借用 |
研究実績の概要 |
本課題の目的は、英語の場所格前置詞から派生接尾辞への文法化の過程を明らかにすることと、そのようにして生じた接辞の共時的な文法特性について理論的に検証することである。
今年度は、昨年度までの研究を基盤にして、2つの方向で研究が大きく進展した。1つ目は、英語学・派生形態論/語形成の領域で研究が遅れている形容詞派生について研究を進め、査読付き国際雑誌に Shimada, M. and A. Nagano. “Relational adjectives used predicatively (but not qualitatively): A comparative-structural approach”と、Nagano, A.“A conversion analysis of so-called coercion from relational to qualitative adjectives in English”という2本の論文を発表した。形容詞には印欧語とアジア諸語で顕著な形態的な差異があることに注目し、言語間対照研究を行い、言語の普遍性について考察した。
2つ目として、借用やコードスイッチングといった言語接触の諸現象は日本の言語研究では扱われてこなかったが、英語史と形態論の関わりを考える上では避けて通れない。今年度これに着手し、国内及び海外の研究者との共同研究で研究を進めた。日本英語学会で英語によるシンポジウムを行うとともに、論文 Nagano, A. and M. Shimada “Affix borrowing and structural borrowing in Japanese word-formation.”を発表した。また、共著書『言語の構造と分析』(開拓社)を出版し、借用まで扱える語形成のモデルを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施計画を立てた段階では、言語接触の問題までは考えていなかった。しかし、文法化による派生接辞の発達という問題を調査する中で、フランス語との言語接触で英語にとりこまれた接辞との比較を行うとよいことに気がついた。当初計画していた軸と、新たに見つけた軸を比較しながら研究を進め、論文3本と共著書1冊を発表することができたので、当初の計画以上に進展していると考える。
また、昨年の段階で「今後の研究の推進方策」として計画した通り、生産性の研究で著名な海外の研究者を招き、共同研究を行い、シンポジウムを行うこともできた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)執筆を依頼されている『最新英語学・言語学シリーズ 第9巻レキシコンと形態論』(開拓社)の原稿を執筆し、共著者と共に内容について議論し、出版の準備を行う。
(2)2019年1月に、本課題を基課題とする、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化A)の交付内定が決まったので、そこでの共同研究を見据えて課題の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた古書が入手できなかったこと、スペインからの研究者の招聘に関し予定より旅費がかからなかったことが理由である。次年度使用額については、課題の研究遂行に加え、ニュージーランドからの研究者の招聘と、言語接触関連の資料の入手、および上記古書の入手のために使用する。
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