研究課題/領域番号 |
16K02755
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
富澤 直人 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (40227616)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | tough constructions / externalization / predication / derivational morphology / tough構文 / 外項化 / 叙述関係構築 / 派生形態論 |
研究実績の概要 |
研究の全体像は、フェーズ理論の枠組みに基づいて、形容詞的受動態(alleged, estimated等)やtough構文型複合形容詞(a hard-to-please man等)が基体の動詞・形容詞構文から演算詞移動を含む統語操作によって生成されることを検討するとともに、文副詞allegedlyやcleverlyなどの意味的・統語的特性、及び、動詞由来派生名詞(explanation等)の統語特性も基体となる形容詞や動詞の構文からの「統語派生の結果」として生じることを示し、語彙サイクルの縮小化と統語サイクルへの一本化を推進することである。 この全体像の中で、既に妥当性を示した形容詞的受動態の派生プロセス(すなわち、be動詞の補部小節の述部が(連続循環的)A移動によって外項化するプロセス)を雛形として、tough構文の派生における外項化の特質を解明する研究を前年度より継続して実施した。既存の分析を、(i)直接的A移動分析、(ii)演算子移動(Aバー移動)分析と独立外項の仮説、(iii)複合形容詞形成分析、(iv)ハイブリッド移動分析(Longenbaugh 2017)の4つに大別し、それぞれに理論的あるいは経験的問題点があることを整理し、その代案として、Aバー移動と叙述関係構築とA移動が連続的に適用することによる派生分析の妥当性を検証する研究を実施した。伝統的に、Aバー移動した要素がその後A移動する事象は「不適切移動」として原理的に排除されるものと理解されてきたが、本代案は、叙述関係構築の規則、および、その出力に適用するラベル決定アルゴリズム(labeling algorithm)の相互作用により、その後のA移動が強制される仕組みであり、tough構文の統語特性の理解に新しい視点を提供できる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
tough構文を、Aバー移動と叙述関係構築とA移動の操作が連続的に適用した結果生成される構文とする分析について、その妥当性を示すにあたって、その中核を成す「叙述関係構築規則」の適用の実態を示す独立した証拠の提示に手間取り、研究の遅れに至っている。なお、叙述関係構築規則の適用後にA移動が自動的に発動するる仕組みは、alleged類の動詞は性形容詞の派生分析の場合と同様に、ラベル決定アルゴリズムから導かれることが説明できており、また、このA移動については先行研究の経験的データ等とも一致する。
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今後の研究の推進方策 |
次の2点にまとめることができる。 第1点は、tough構文の派生分析の中核を成す「叙述関係構築規則」の適用を示す独立した証拠を提示すること。また、その一連の仕組みから、例えば*John is hard to arriveが非文になること、移動元が目的語であると総じて容認可能(This book is difficult to convince people that they ought to read)だが、主語だと非文ととなる(*John is hard to believe liked Sue)ことなどの事実を導出する。 第2点は、alleged、would-be、wannabe等の派生語が述部要素のA移動により生成され、また、tough述語がAバー移動と叙述関係構築の後にA移動を引き起こし生成されるという本研究の仮説の妥当性を、動詞由来の派生名詞の分析を通じて検証する。 以上の2点を通して、派生語の統語的派生の妥当性を示す。
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