日本語には多数の再帰形式が存在するが、それぞれが文法とどのように関連づけられるのか、従来明確にされていなかった。本研究では、「自身」と「自己」が統語的に述語を再帰化するのに対し、「我」や「身」のような和語は語彙的な仕組みを用いて述語を再帰化する形式であることを確認した。また、「自身」と「自体」は名詞句内の焦点として位置付けることができる。「自分」については、Nishigauchi (2014)の分析によれば、統語的な束縛を受ける意識主体照応形であることになる。以上のように、日本語の再帰形式を文法のモジュールに分散させて特徴付けることが可能であることを示した。
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