研究課題/領域番号 |
16K02760
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
澤田 茂保 金沢大学, 国際基幹教育院, 教授 (00196320)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 話しことば / モダリティ |
研究実績の概要 |
本研究は、対面状況の英語コミュニケーションにおける表現形式の具現化(構造変化の仕方)において、モダリティがどのような作用を果たしているか、とくに日本語との比較を通じて、その影響の解明と理論的な考察をおこなおうとするものである。平成29年度の計画は、(a)ラジオドラマのスクリプトの音声起こしによるコーパス作成を継続;(b)インフォマントへのインタビュー調査;(c)タグの理論的考察、背後の原理の解明であった。(a)は、H28年度からの継続で、ラジオドラマの音声を起こして、スクリプトを作成して、小さなコーパスを作成した。(b)では、(a)を行いながら、細かな意味の違いなどの聞き取りを行った。(c)については、本来は、日本語との対比を目標としていたが、タグとモダリティの関係について考察した程度で終わった。H29年度の実績としては、昨年度英語語法文法学会第24回大会のシンポジウムで発表した内容を加筆・修正して、H29年の3月に「Spoken Englishにおける構造的な特徴について―断片化の諸相―」として、英語語法文法研究第24号に発表した。ここには日本語との違いについて若干触れた。また、8月に教員免許更新講習の講師を努めて、現職教員に話しことばの特徴について講習を行って、一部の成果の還元を行った。また、断片化の研究から生まれた論考として、「はなしことばと断片的表現―Not XPについて―」(中村芳久教授退職記念論文集刊行会(編)『ことばのパースペクティブ』)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、対面状況の英語コミュニケーションにおける表現形式の具現化(構造変化の仕方)において、モダリティがどのような作用を果たしているか、とくに日本語との比較を通じて、その影響の解明と理論的な考察をおこなおうとするものである。平成29年度は英語翻訳のある現代小説の日本語原著とその英語翻訳の書籍を比較して、対面での会話部分を拾い出し、日英の違いについて比較検討を行った。しかしながら、小説などの会話形式は、当初想定していた以上に整理された形で書かれており、本研究が構想しているモダリティの対照研究の有効な事例の収拾が困難であることが判明した。やはり音声を伴った生きたものでないとモダリティの微妙な違いを検知することは難しいと思われる。母語話者とのインタビューを通じて、ラジオドラマのスクリプト研究を行うことで、補うことにした。全体的に、研究のための時間を勤務時間内で確保することが難しかったが、学会機関誌に論文を投稿して掲載された。若干のつまずきがあったが、総合的な評価として、概ね順調に進展している、と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
勤務校でH28年度施行のカリキュラムについて、その円滑な実施を行うために大量の時間がとられ、また、役職上によって管理的な業務に時間がとられており、現在の業務から当初計画の研究エフォートを割くことは実は困難であると感じている。そのため、今後の計画としては、当初より少ない時間となるが、それを有効に使うことにする。今年度の前半においては、引き続いて日英語の比較を行ってデータの収集と、母語話者へのインタビューを併用して、日英のモダリティの違いの記述的な分類を行う。また、昨年度と同様に、8月に教員免許更新講習の講師を務める予定なので、その機会に中高学校の英語教員に対して新しい視点に立った文法教育の一つとして、モダリティの視点を入れた英語表現の見方について講義を行う。このことは、本研究の計画調書でも触れたことである。後半は、Praatを使って、音調面の分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務先の管理業務に時間が取られ、母語話者インフォマンとの聞き取りの回数が確保できなかったため。
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