研究課題
本研究は以下の2点に答えようとする研究の一部である。すなわち(1)すべての前置詞の意味は何か?(2)日英語の様々な現象は、英語は<有界的・結果志向・スル的>日本語は<無界的・経過志向・ナル的>な傾向に沿っている、つまり、相同的であるとされているが、前置詞の意味も、この傾向に沿っているか?前置詞の多義研究は、1語の多義を扱うSemasiologicalな研究(例:Fruitは果実・結果・・・という意味があるとする研究)に終始している感があるが、本研究は、それに、近似義語を扱うOnomasiologicalな視点(例:果実を表す語にはfruit,nut・・・があるとする視点)を加え、そのOnomasiologicalな意味の重なりの緊張関係が意味拡張を阻止すると考えている。先行研究の中には、2語以上を扱う研究もあるが、それらの違いを述べるにとどまり、その違いが意味拡張を制限するといったような「動的」な研究はまだない。そこで本研究は、Onomasiological・Semasiological両方のアプローチから前置詞を研究し、さらに、その研究結果をもとに、教材を作成している。平成30年度は、平成29年度に引き続き、downとunderをupとの比較を中心に研究を進めてきた。具体的には、一見するとdownとunderは、前者が動的な動きをもつ「下へ」という意味で、後者が静的な、動きを伴わない「下で」という意味を表すように感じるが、そのような考えでは、次の例文を説明できない;(1)He walks down the road(なぜ地下への動きを表さないのか)(2)He walks under the road (なぜ”静的”な意味のunderが動きを伴った文章で使えるのか(3)He shot the lion up/ down (なぜupは上へを意味しないのか)。また、その考察をもとに、モジュール型の自学自習英語教材を作成し、公開した。
2: おおむね順調に進展している
平成30年は、down とunderの意味を、upとの比較を通して、研究し、その研究結果をもとに、モジュール型の英語自習教材を作成した。
平成30年度に行ったup, downの研究、また、これまでの研究で明らかにしてきた、as, by, on, in, upon, to, withなどの意味研究をもとに、それらの研究で使った研究方法を使い、さらに、別の前置詞の意味研究、および、その研究をもとに、英語自習教材を作成する予定である。
最終年にあたり、研究成果のまとめの出版に使用するため。
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信州大学総合人間科学研究
巻: 13 ページ: 2-16
Proceedings for 11th International Conference on Language, Education, Humanities & Innovation 2018
巻: 2018 ページ: 25-35