研究課題/領域番号 |
16K02762
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大室 剛志 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70185388)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 半動名詞構文 / 構文の成立過程 / 構文成立後の展開 / 生成理論 / 大規模コーパス / 概念意味論 / 動詞と構文 / 同族目的語構文 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、本科研で扱う半動名詞構文、とりわけ、動詞spendが時間表現を取った後に生じる半動名詞構文に関して、中心メンバーとしての現在分詞の準述詞、派生メンバーとしての準述詞である過去分詞、形容詞句、前置詞句のそれぞれについて、生成統語論、概念意味論、動的言語理論の観点から、詳しく考察した。具体的成果としては、(1)半動名詞の部分からwh要素が抜き出せることを根拠に半動名詞は項として振る舞うとの結論を得た。(2)現在分詞の準述詞を派生させる場合に単純な前置詞削除分析で済ますことは、半動名詞補部を許す述語が複合的意味解釈を得るので不可能であるとの結論を得た。(3) 本科研では、理論的枠組みの1つとして概念意味論を用いるが、そのために、私自身の理解を整理する目的と知識を研究社会に還元する目的を兼ねて、単著『概念意味論の基礎』を開拓社より上梓した。(4)本科研で扱うもう1つの構文である同族目的語構文について、同族目的語に修飾要素が何故義務的になるかを概念意味論から説明した。具体的には、Jakendoff (1990)の一連の付加詞規則に注目し、付加詞規則が持つ一般的な属性である非余剰性に同族目的語の修飾要素の義務性を帰着させることができるという趣旨の論文を執筆し、開拓社刊の論文集『ことばを編む』に収録していただいた。(5)研究社から30年度中に出版予定の単著『動詞と構文』を執筆し、その第6章に「他動詞と半動名詞構文」として(1),(2)の研究成果を含む論文を執筆し、含めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)半動名詞の部分からwh要素が抜き出せることを根拠に半動名詞は項として振る舞うとの結論を得た。(2)現在分詞の準述詞を派生させる場合に単純な前置詞削除分析で済ますことは、半動名詞補部を許す述語が複合的意味解釈を得るので不可能であるとの結論を得た。この2点まではよいにしても、準述詞としての前置句の生起には場所句としての前置詞句がなんらかの影響を及ぼしているのか否か、準述詞の形容詞句には、例えばstage-level対individual-levelといった意味的制限があるのか等に関して平成28年度に収集した言語資料並びに平成28年度の作業を基盤に深く考察していく必要がまだ残されている。研究成果を単著の一部として含めることが出来たのは幸いである。よって、進捗状況としては、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に計画して出来ていない、準述詞としての前置句の生起には場所句としての前置詞句がなんらかの影響を及ぼしているのか否か、準述詞の形容詞句には、例えばstage-level対individual-levelといった意味的制限があるのか等に関して研究成果を挙げるようにし、当初30年度に計画していた、意味的に非常に似た前置詞in付き動名詞構文が存在しているにもかかわらず何故前置詞inを欠いた半動名詞構文が出現するのかその構文成立過程のメカニズムの解明を行う。また基本メンバーから派生的なメンバーへの文法展開のメカニズムの解明を行う。同族目的語構文についても特にその史的面に焦点をあてながら、構文成立過程とその後の文法展開のメカニズムを解明する。両者の共通点がないかを深く考察することでより一般的なメカニズムが存在するのかその解明に迫りたい。本科研の成果を一部含む単著『動詞と構文』が無事出版されるように努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入しようと考えていたプリンターを購入しなかったため、次年度使用額が発生した。次年度はプリンターを購入するとともに当初の予算通りに予算を使用して行く予定である。
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