平成30年度は、本科研で扱う半動名詞構文に関して、とりわけ、意味的に非常に似た前置詞 in 付き動名詞構文が存在しているにもかかわらず何故前置詞 in を欠いた半動名詞構文が出現するのかその構文成立過程のメカニズムの解明を行った。また基本メンバーから 派生的なメンバーへの文法展開のメカニズムの解明を行った。具体的成果としては、(1)半動名詞構文は、in付き動名詞構文に統語と意味の不一致が起き、それを解消する手段として意味に駆動された統語的再分析により、準述詞構文をモデルとして派生的に得られた構文であるとの結論を得た。(2)一旦、現在分詞を補部とする半動名詞構文が成立すると、準述詞構文をモデルとしたので、述詞パラダイムに沿ってその後の文法展開が起こり、変種としての形容詞句、過去分詞句を補部とした構文が生起し出すとの結論を得た。また前置詞句補部に関しては、元々spend+timeの後に生起し得たとの結論も得た。(3)研究社から本科研の研究成果の一部を含む単著『動詞と構 文』を執筆し出版した。その第6章に「他動詞と半動名詞構文」として本科研の研究成果を含めた。 (4)日本英文学会中部支部より特別寄稿論文を執筆するよう依頼があり、本科研とも密接に関係する生成語彙意味論の研究を意味論の自律性を示す証拠として再解釈することが可能であるとの観点から論文「生成文法における自律意味論の必要性」を『英文学研究(支部統合号Vol.11)に掲載した。(5)第13回英語語法文法セミナーの講師を務め、本科研にも関わる生成語彙意味論の研究を「修飾との関係で名詞の意味の中身を探る」という題目で、現場の中高および大学の英語教師、英語学院生に社会還元した。
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