研究課題/領域番号 |
16K02766
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (70213866)
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研究分担者 |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (30191787)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メタファー / オクシモロン / Wilfred Owen / 認知詩学 / 寓意 / 擬人化 / ニュースメディア |
研究実績の概要 |
本年度は、Wilfred Owenの作品を主たる研究対象とし、第一次世界大戦の兵士の苦難を描いた“Storm”と題する詩の意味の構造、特にメタファーやオクシモロンの働きについての考察を「Owenのメタファーとオクシモロン」と題する論文にまとめた。Owenは戦地に赴いた自らの経験に基づき、戦地の惨状や兵士の心理を描く詩作品を数多く残している。上記の作品の分析の際に、それらの戦争詩群の中から10点を選び、並行して考察することにより、詩に示された表現の背景となる詩人の認知構造を多角的視点から掘り下げた。 さらに本年度は、日本認知言語学会20周年を記念して朝倉書店から刊行された『認知言語学大事典』の「認知詩学」のセクションを担当執筆した。認知言語学の枠組みにおける認知詩学の分野の発展の経緯を振り返り、認知詩学研究に不可欠な概念および研究姿勢を解説しながら、この研究分野の意義と課題について考察した。 研究代表者と研究分担者は19世紀初頭に英国で刊行された動物寓意詩群の共同研究を12年にわたって続けているが、本年度はThe Lion's Parliamentと題する詩に焦点をあてて共同研究に取り組み、作品刊行当時の英国が直面していた国際情勢が詩の意味にどのように関係しているかに着目しながら、作品の意味を形作る擬人化と寓意のメタファーについて考察した。また、代表者と分担者は、メタファーやレトリックが豊富にみられる英字新聞論説記事の分析研究に数年来取り組んでおり、分担者の主導で日本の社会や文化をテーマとした論説記事を集積してその意味の構造について注釈と設問によって解説する英語教科書Advanced Reading Word to Word(ニュースメディアで読み解く現代日本)を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、研究分担者が所属する大学全体に関わる重要な職務を担い、研究代表者も関連する全学レベルでの職務を担ったため、研究時間が大幅に制限された。さらに、職場の研究棟が改修工事のため昨年度閉鎖され、研究代表者、研究分担者の研究室が大学内の別キャンパスへ移転となり、12月まで、授業や会議などの学内業務に携わるキャンパスと研究室のキャンパスが別という不便な環境で、多くの重要な研究資料が段ボール箱に詰められた不自由な状態での研究を余儀なくされた。12月に研究棟の改修工事が終了し、元の研究室に引っ越したが、その前後の数か月間は引っ越し準備と後片付けに追われたため研究時間が大きく削がれた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Shakespeareの時代(17世紀)から現代にいたるまで射程を広く取り、さまざまな詩作品を対象として、メタファー成立の背景となる認知メカニズムの解明に向けて考察を深める。研究分担者を中心とした翻訳グループで進めているKay and Allan著のEnglish Historical Semantics (2016)の翻訳作業の完成、刊行を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者および研究分担者が所属大学において担った大きな職務のため、研究時間が大きくそがれたこと、また所属部局における研究棟改修工事に伴う研究室移転により、十全な研究環境で研究することができなかったため、研究の一部を次年度に延期せざるを得なくなったことが理由として挙げられる。次年度は、Shakespeare研究関連文献等をさらに充実させることと、研究分担者を中心とした翻訳研究グループで進めているKay and Allan著のEnglish Historical Semantics (2016)の翻訳作業を完成させ、翻訳書を刊行する準備に使用する予定である。
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