研究課題/領域番号 |
16K02766
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (70213866)
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研究分担者 |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (30191787)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Shakespeare / Sonnets / メタファー / レトリック / 逆転 / 繰り返し / 音韻 / 英詩 |
研究実績の概要 |
今年度はShakespeareのSonnetsを研究対象とした。Shakespeareのソネットは3つの四行連句と末尾の二行連句で構成されている。本研究では、末尾の二行連句の諸機能のうち、特に詩の叙述内容を逆転させる機能に着目し、シェイクスピア154編のソネットの中から、最終二行連句で逆接の語が示され、3つの四行連句で述べられていた内容が逆転するという論理構造をもつ詩をいくつか観察し、内容の逆転に説得力をもたせるためにメタファーがどのように寄与しているのかを考察した。 研究の結果、逆転のレトリックには5種類の構造が見られ、メタファーを構成する概念を引いたり足したり衝突させたりするという巧妙なレトリックが機能していることが判明した。Shakespeareのソネット作品における叙述内容の逆転が強く鮮やかな印象を与えるのは、複数の視点を重ね合わせ、巧妙なレトリックにより、逆接語の前項と後項の双方の内容に豊かさと説得力をもたらしているからだと考えられる。 上記の研究は、研究分担者との研究協力により実現した。研究分担者は、2019年度と2020年度の大学院博士前期課程の担当授業において、本研究課題と密接な関連を有する「英詩のレトリック」をテーマとしてソネット形式の英詩を精読し、音韻の効果、同一語句の繰り返し、類義語による言い換え、統語構造の理解、そして各篇の基底をなす概念メタファーに着目する演習形式の授業を実施し、研究代表者もこの演習に参加した。研究分担者はこの2年間の成果として共同研究プロジェクト報告書を編集し、研究代表者・分担者・博士課程院生による論文を掲載し、「特集 Shakespeare’s Sonnetsのレトリック再考」として発表した。研究分担者はソネットに見える繰り返しのレトリック効果について、音韻、語、統語構造の各レベルから再考する論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、新型コロナウイルス感染拡大により、4月に緊急事態宣言が発出され、研究室への出入りが事実上制限され、研究に必要な文献の多くを研究室に残したまま、自宅での研究を余儀なくされるという不自由な研究態勢が続いた。緊急事態宣言の解除後も、感染拡大の第2波、第3波が生じ、その間、研究室での研究は必要最低限の時間に制限され、また、授業が遠隔体制となったためにその実施に要するエフォートが大幅に拡大し、今年度1年間全体にわたり、研究に割くべき時間と労力が大幅にそがれた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も、引き続きShakespeareの詩作品を中心に、現代にいたるまで射程を広く取り、さまざまな詩作品を対象として、メタファー成立の背景となる認知メカニズムの解明に向けて考察を深める予定である。研究代表者および研究分担者の所属大学が位置する大阪では、2021年4月現在、新型コロナウイルスは昨年度を大幅に上回る感染拡大状況を見せており、昨年度に引き続き授業もオンライン形式を余儀なくされ、研究に支障をきたすことが懸念されるが、できる限り工夫して研究を遂行するよう努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナウイルス感染拡大により、研究室での研究は必要最低限の時間に制限され、また、授業が遠隔体制となったためにその実施に要するエフォートが大幅に拡大し、1年間全体にわたり、研究に割くべき時間と労力が大幅にそがれ、当初予定していた研究が十分にできなかった。次年度には、感染状況が好転した時に、研究資料収集のための国内出張(国立国会図書館)を実施する予定である。また、研究分担者は継続中の動物名称の比喩義の研究の資料収集のため、海外出張(英国図書館)を計画している。
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