研究課題/領域番号 |
16K02772
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
太田 聡 山口大学, 人文学部, 教授 (40194162)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 混成語 / 派生語 / アクセント |
研究実績の概要 |
平成28年度は、混成語形成における「長さの制約」が破られるのはどのような場合かという問題、及び日英語の名詞形成接辞の音韻特性について論文にまとめた。 混成語は、日本語も英語も、右側(後半)の原語の長さに合わせて作られるのが一般的である。例えばbreakfast + lunch → brunchでは、brunchはlunchと同じ1音節になっている。ところが、例えば「バカ + カップル → バカップル」のように、右の原語よりも長い混成語が作られることもある。このときの特徴は、左の原語の終わりの部分と、右の原語のはじめの部分に同音が含まれていることである。このように同音が含まれていると、その同音を生かして洒落てみたいという意識が働きやすくなる。そこで、こうしたタイプの混成語を「ダジャレ混成」と命名して論じ、英語にもまったく同じ傾向があることを明らかにした。 日本語の形容詞を名詞化する代表的な派生接辞は「‐さ」と「‐み」である。そして、従来の研究では、「‐さ」は「‐み」よりも多くの語に付加できるという生産性の観点から、「‐さ」と「‐み」は、それぞれ、英語の-nessと-ityに相当すると指摘されてきた。しかしながら、-nessの特徴は元の語のアクセントを一切変えないことであるのに対して、「‐さ」は、例えば「しろ’い → し’ろさ」のように、アクセントの移動を通常引き起こす。そして「‐み」も、「‐さ」と違ったパターンのアクセント変化をもたらすことが多い。そこで、英語の接辞の音韻的な振る舞いを説明するために仮定されてきたレキシコン(語彙部門)とは、内部構造がまったく異なるものを日本語に仮定する必要があることを主張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、28年度は、主に複合語の例外的なアクセント型について論じる予定であった。しかしながら、査読付き論文に仕上げるのに思った以上に時間を要したため、先に、(29年度に予定していた)混成語と派生語の研究をまとめ上げた。また、日本語の複合語の連濁とアクセントについての論考も脱稿し、29年度中には出版予定である。さらに、査読付きではないが、複合語のアクセントに関する小論も29年度中に出版される。よって、順番が入れ替わってしまったが、論文の執筆・発表は全体として順調に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
28年度中に仕上げることができなかった複合語の例外的アクセント型に関する論文の完成に最優先で取り組む。また、混成語のデータの再収集と統計処理を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度に海外の学会での発表が実現しなかったため、旅費が残ることとなった。そこで、29年度に海外の学会・講座に複数回出かけることとし、28年度の未使用分は、その渡航費用の補充にすることにした。また、28年度の物品購入費も抑えて、29年度の渡航費用にできるだけ回すようにした。
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次年度使用額の使用計画 |
韓国形態・音韻論学会主催の国際会議"2017 Summer Conference"において講演を行う。また、アメリカ言語学会が主催してケンタッキー大学で開かれる"2017 Linguistic Institute"に参加する。これらの旅費の一部に繰り越し分を充てる。
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