研究課題/領域番号 |
16K02777
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
高見 健一 学習院大学, 文学部, 教授 (70154903)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機能的構文論 / 形式と意味 / 形容詞 / 叙述と限定 / 動詞句削除 / 助動詞 |
研究実績の概要 |
本研究は、2016年度から2020年度にわたる5年間で、多くの英語構文の適格性は、単に統語的要因にのみ左右されているのではなく、意味的、機能的、談話的要因にも大きな影響を受けていることを示し、「機能的構文論」による英語諸構文のより良き説明を求めるものである。研究3年目の今年は、昨年度からの英語の形容詞に関する様々な構文について研究を深め、海外共同研究者の久野暲氏(現在、ハーバード大学名誉教授)との議論を重ね、2018年10月に『謎解きの英文法ー形容詞』(くろしお出版)を共著として出版した。形容詞の描写述語構文(John ate the meat rare. など)やWh疑問文(How rare do you usually eat your stakes? など)の適格性に意味的、機能的、語用論的要因が決定的に関わっていることを示せたことは、大きな成果だと思われる。 さらに、私個人としては、英語の動詞句削除(John will go to Paris, and Mary will, too. など)と副詞の修飾ターゲット(先行文では、too の修飾ターゲットは Mary)に関して論文を書き、この現象にも、統語的要因だけでなく、意味的、機能的要因がその適格性に大きな影響を与えていることを示した。また、日本語の「~てある構文」(「魚が焼いてある」など)に関しても、話し手の主観性、主体性という意味的要因が深く関わっていることを明らかにした論文を執筆した。これら2つの論文は、2019年度に発行が決まっている。 また、東京言語研究所の依頼により、2019年3月16日、17日に機能的構文論に関する集中講義を行い、「日英語における機能的構文分析ー何が適格文と不適格文を決定づけるか」というテーマで6コマの講義を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
形容詞に関する機能的な構文分析を提示し、書籍として出版することができたのは、共同研究者のハーバード大学名誉教授、久野暲氏とのメールによる頻繁な議論、話し合いに負うところが大であるが、私が2018年6月に2週間ボストンに行き、直接、久野氏と会って議論を重ねたことが大きな推進力となった。またその際、ボストン及びその近郊に在住の英語母語話者、Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph.D.)と会い、英語の様々な例文の適格性に関してなど、多くの議論ができたことも大きな助けとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、5年間にわたる本研究の4年目であり、英語の助動詞や代名詞、再帰代名詞に焦点を当て、これらが織りなす構文現象を機能的構文論に基づいて分析を進める予定である。また、機能的構文論の立場から、より適切な説明が可能となるような英語、及び日本語の構文現象も探りたい。
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