研究課題/領域番号 |
16K02777
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
高見 健一 学習院大学, 文学部, 教授 (70154903)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 機能的構文論 / 形式と意味 / 助動詞 / 依頼表現 |
研究実績の概要 |
本研究は5年間で、多くの英語構文の適格性は、単に統語的要因にのみ左右されているのではなく、意味的、機能的、談話的要因にも大きな影響を受けていることを示し、「機能的構文論」による英語諸構文のより良き説明を求めるものである。研究4年目の本年は、英語の様々な助動詞の振る舞いを考察し、その意味関係や構文の適格性の研究を進めた。そして、次のテーマに関して、5つの論考を海外共同研究者の久野暲氏(現在、ハーバード大学名誉教授)と共著で書き上げた。(1) Be 動詞は本動詞か、助動詞か? (2) 未来事象を表す4つの表現ー特に、will と be going to の違いはどこから来るか? (3) Used to と would はどこが違うのか? (4) Will you ...? は指示・命令表現か? (5) Can you ...? は Would you ...? より丁寧な依頼表現か? 来年度は、さらに助動詞の can, may, must, さらに助動詞と否定の作用域などの現象を取り上げ、全体を著書の形で出版したいと考えている。 さらに私個人としては、窪薗晴夫氏(編著)『よくわかる言語学』の第3章「機能文法」を執筆し、英語と日本語に関する10のトピックを取り上げて、機能的構文論がそれらの現象をどのように説明するかを概説した。特に、英語の命令文、日英語の談話省略、英語の相互動詞と受身文、any の使い方、日本語の「~ている」表現や「~てある」表現など、機能的構文論のアプローチが他の理論より説得的な説明を行なうことができることを示せたと思われる。 さらに、言語研究サークル「言語と人間研究会」から講演の依頼を受け、英語の動詞句削除と副詞の修飾ターゲットに関する講演を行ない、同研究サークルの機関紙 Human Linguistics Review No. 4 にその内容を執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
英語の助動詞に関して5つの論考を書き上げることができたのは、共同研究者のハーバード大学名誉教授、久野暲氏とのメールによる頻繁な議論、話し合いに負うところが大きい。また、助動詞を用いた様々な例文の適格性判断やそれらの例文に関する貴重なコメントを英語母語話者の Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph.D.) から頻繁に得られたことも大きな要因である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで英語の助動詞に関する論考を5つ完成させているので、さらに助動詞の研究を進め、過去時を表す could と couldn't の意味の違いや could の特異性、can, may, must が肯定文と疑問文で異なる振る舞いをすること、さらに助動詞と否定の作用域(スコープ)などを考察して論考を書き、両者を合わせて一冊の本として出版する予定である。そして、5年間の研究のまとめも行ないたい。
|