研究課題/領域番号 |
16K02781
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
柴崎 礼士郎 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (50412854)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歴史言語学 / 構文 / 構文化 / 文法化 / 英語史 / 対照言語学 / 談話分析 / 語用論 |
研究実績の概要 |
本報告書執筆時(2018年5月)の段階で、刊行済論文および近刊論文が合わせて11件、図書7件、刊行済および準備中編著2件、訳出中書籍1件、研究発表および講演が合わせて14件である。 この数値は研究計画以上の実績報告であり、その理由としては以下の2点が考えられる。まず、本研究チームは進捗状況を測る基準として海外での論文刊行状況を重視しているが、近年、日本語で刊行される興味深い論文集への執筆依頼が増加傾向にある点である。この傾向は研究協力者(とりわけ東泉裕子氏)の研究実績にも確認することができる。国際研究の水準を見据えて地道に研究を進めてきたことが、徐々に日本国内でも受け入れられ、本研究チームが討論の場に参加できる機会を得るだけではなく、逆に、知り得た知人を最新の国際研究へ誘う役割を担えているものと判断している。 もう一点は、研究の基礎となるデータ収集と分析の質が高まったことにある。有償無償にかかわらず、利用可能なデータベースの公開やアップデートが近年著しい。研究代表者(柴﨑)は英語研究面で、研究協力者(特に東泉)は日本語研究面で、最新データベースの情報収集の努力を怠っていない。結果として、重要な研究テーマを最新のデータを用いて研究報告することが可能になっている。 一方で、文献資料を精査することによる背景知識の理解も必要である。とりわけ、通時的研究には紙媒体の資料の確認も不可欠であるため、昨年度同様、文献資料の確認作業も同時並行的に行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で包括的用語として用いる「投射構文」(projector)は、伝統的な定型表現研究や、言語の使用実態に基づく言語理論とも相性が良い。その意味で、国内外の論文集への執筆依頼も増え、調書作成時の予想を超えて研究が広がっている。 理由は以下の通りである。投射構文研究は欧州から始まり、EU圏を中心とした西欧語研究が未だその中心である。こうした研究の潮流に、系統発生的に異なる日本語や韓国語からも近い定型表現が確認でき、歴史的発達面でも興味深い共通点が散見することを研究チーム(とりわけ柴﨑と東泉)が発表してきた点である。研究代表者(柴﨑)は、英語やドイツ語の「貝殻名詞構文」(shell noun constructions)と日本語の「陳述副詞」の歴史的発達に興味深い平行性を確認し継続的に発表を行ってきた。研究協力者(大橋)の取り組む譲歩構文にも近いものが確認できる。研究協力者(東泉)は、日本語の接続助詞表現と副詞表現に、投射構文に近い談話機能と史的発達経緯を確認している。国内外での研究実績が浸透したためか、研究代表者(柴﨑)は国内での講演会依頼を2件受け、2019年3月には海外での基調講演を引き受けている。更に、研究代表者(柴﨑)は外国人研究員の受入依頼を受け、近々、先方と本学とで調整に入る予定である。 現在、研究協力者(東泉)は研究員としてブリティッシュ・コロンビア大学に所属している。そのため、日本国内でのワークショップや研究会を実施することはできない。しかし、共通の知人である同大Laurel Brinton教授との直接の意見交換が密になるなど、マイナス面を補って余りある研究環境に至っている。今後の研究の推進方針でも明記するが、Brinton教授を含め、海外の優れた専門家を交えた国際ワークショップを開催する予定である。研究完成年度に入り最良の研究環境に至っていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
この1年余りに、研究チーム全員を含めたメンバーでの国際ワークショップも2度開催することがでた。よって2018年度は、これまでの研究発表を論文として仕上げることが第一の目標である。同時に、国内外で刊行予定の論文集、事典、訳本の準備を進めている。とりわけ、研究代表者(柴﨑)が編集に携わるFormulaic language in the history of Englishは、本研究課題の研究成果の大きな部分を占める重要な取り組みである。 論文執筆に加えて、各自、国内外での研究発表の予定が入っている。また、研究成果発表の場として、次年度開催の国際学会へも申請準備中である。一つは「国際語用論学会2019」(IPrA2019, 香港, 2019年7月)であり、責任者として東泉と柴﨑が携わっている。もう一つは「第24回国際歴史言語学会」(ICHL24, 豪州キャンベラ, 2019年7月)であり、同じく東泉と柴﨑を中心として準備を進めている。本報告書執筆時(2018年5月)の段階で、申請締切を過ぎていない重要な学会も国内外を問わず少なくない。よって、研究の進捗と方向性を鑑みつつ、整合性が高く有意義な討論の可能な学会を見極めながら、研究発表を模索している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の海外出張旅費用、あるいは、刊行予定の関連書籍購入のために繰り越しとした。
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