研究課題/領域番号 |
16K02785
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研究機関 | 名古屋学院大学 |
研究代表者 |
赤楚 治之 名古屋学院大学, 外国語学部, 教授 (40212401)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Finiteness / cartography / Focus主要部 / 格認可 |
研究実績の概要 |
平成28年度分の研究では、課題のFinitenessを担うFin主要部についての文献調査を行いながら、Fin主要部と共起すると考えられるFocus主要部を、格認可(主格:ガ格)という観点から研究を進めた。後者については、科研費申請以前から探ってきたFocus主要部の特質が、Fin主要部のそれとどう絡むのかを見極めるために不可欠な研究であると考える。日本語ではFin主要部が独立して現れる現象は未だ確認されておらず、RizziらのCartographyの階層性を利用して、分裂文などにおける「の」の生起分布から、補文標識の「の」がFin主要部に現われると仮定されることが多い。しかしながら、その「の」は、格助詞が続くなど、名詞的特性を持つものであり、ヨーロッパ言語におけるFiniteness(動詞的特質)とどのように関係するのかについては依然明確にはなっていない。そのために、Focus句が現れる時、談話(CP)領域のForce(主要部)とFiniteness(主要部)がそれぞれ分化した形で現れるという桒原(2013)の提案を採用し、Finitenessの特性を探る試みを行っている。その足掛かりとして、主格認可に着目している。研究成果としては、4月にアメリカ合衆国Wisconsin州立大学Madisonで開催された研究会と6月にスイスのジュネーブ大学で開催された学会で発表し、さらにそれを発展させたものを2月の北海道理論言語学研究会で発表を行った。各々の発表において有意義なコメントがもらえたので、現在はその点を踏まえた上で、研究のさらなる見直しの段階に入っている。また、10月にはFocusとFinitenessとの関係で日本語のSluicing(「穴あけ」)現象をとりあげた発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究によってFinitenessの定義の成立状況を把握することができ、個別言語による特性の違いがあることを理解した。日本語では、ヨーロッパ言語にみられるFinitenessの特性はこれまでCartographyにおけるポジションから推測されてきた。これは、日本語ではそれほどfinitenessの現れ方が明確ではないことの裏付けでもある。現在は日本語のFin主要部の持つと考えられている名詞的特質がヨーロッパ言語におけるFinitenessの動詞的特質に同化させることが可能かどうかを考察するために、Focus句が現れる例を用いて、Fin素性の動きを観察している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
さらにFocusの持つ特性を探ることによってFin主要部の働きを捉えたい。特に現在 CP領域からTense主要部に「継承」されるとするfocus素性やEPPなどの動きを観察することで、Fin主要部の働きを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
4月と6月に行った海外での研究発表については、飛行機の座席確保の必要から3月に予約並びにカード決済を行ったために、2016年度の支出として計上することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は2つ以上の国際学会で発表することを目標にしているので、予算は予定通りに執行することが可能である。
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