研究課題/領域番号 |
16K02790
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
伊藤 美紀 (伊藤横山美紀) 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00325903)
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研究分担者 |
高橋 圭介 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (20455108)
伊藤 恵 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (30303324)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本語教師教育 / 日本語教員養成 / やさしい日本語 / 観光 / 書き換え / 言語調整 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本語教員養成に関連する科目で言語調整について学んだ学部の大学生が、観光用展示物に書かれている説明文をやさしい日本語へ書き換える際にみられた特徴について考察している。とりわけ平成29年度は、様々な観光用の情報提示方法の一つである、リトファスゾイレと呼ばれる円筒形掲示塔に掲載されている難解な日本語をやさしい日本語に書き換える際にみられた特徴について考察した。 書き換え例の分析においては、伊藤他(2017)の分析結果と共通の結果が得られると同時に、今回書き換えを行った原文が歴史上の人物や出来事に関する説明であったことに起因する、いくつかの特徴を観察することができた。また、適切な書き換えが難しかった例についても考察し、推測される原因についても指摘したが、そのような書き換え例に見られる問題点がやさしい日本語を必要とする読み手にとっても問題になりうるのかは別途検証する必要がある。 書き換えた学生を対象にしたインタビュー結果においては、書き換えの際には、「原文の難しさ」、「用語の書き換えを統一する方法」および「展示向けのやさしい日本語版における情報量の調整」という三つの難しさが存在していることが指摘された。これらの難しさの詳細と解決方法を明らかにすることが今後の課題である。 また、平成29年度は、リトファスゾイレ上に掲載されている説明文の理解を支援する方法として、理解を支援するシステム上に、やさしい日本語版を搭載することを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に収集したデータの範囲内において、日本語教員養成科目を履修している学生は、書き換えを通して多くのことを学んだことが明らかになった。基本的には書き換えマニュアルに従いつつも、「一文を短くしたときや説明を加えたときに、流れが途切れないように気をつけた」との回答からもわかるように、マニュアルを超えた配慮が見られた。特に、受身文を回避するために用いられたさまざまな表現や、異なる視点から事態を捉え直すことによって生まれた書き換えは、いずれも学生に与えられたマニュアルにはないものであり、書き換えの経験を通して学生が成長したことを示す成果である。
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今後の研究の推進方策 |
以下の3点について研究をすすめる予定である。 1. 引き続き他の掲示物についても、本稿における考察結果を踏まえながら、やさしい日本語への書き換えを行っていく。 2. 日本語教師教育のための書き換え活動に関する提案を行う。 3. 一般の日本語母語話者が外国人を意識したやさしい日本語等への書き換えや言い換えを行う時に必要とされる情報および手法を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に支援システムの拡張開発を予定していたが、開発補助者の確保に時間を要した。平成30年度には人材を確保し、拡張開発を行う予定である。
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