研究課題/領域番号 |
16K02791
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
山路 奈保子 室蘭工業大学, 工学研究科, 准教授 (40588703)
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研究分担者 |
アプドゥハン 恭子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (00184630)
因 京子 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (60217239)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本語会話入門 / 教室外環境 / 動機付け / 主体的学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本語後学習経験を持たずに来日し、日本語学習のための時間を安定的に確保することが困難な研究留学生や外国人研究員を対象とした、短期集中型でかつその後の継続的な日本語習得への足がかりとなる入門期日本語教育の方法を開発し提案することをめざすものである。 平成28年度前期は、対象となる学習者のニーズ把握とシラバス検討のため、既存の「サバイバル日本語」教材を用いた1.5時間×10回のコースを試行した。教室活動としては、教室外での日本語使用と観察の促進を重視した活動を多く取り入れた。教室活動における観察結果およびコース終了後の学習者による評価からは、コースの方針自体は支持されているものの、提示した表現が実際の場面での使用や理解と必ずしも結びついていないケースがあったと考えられ、より彼ら自身の環境に沿った表現の選定や場面設定が必要であることが示された。 この結果をもとに、提示する場面及び導入表現の取捨選択を行い、全8課からなる教材を新たに試作した。教材の各課は1)モデル会話、2)基本表現(各課につき3項目)の解説および運用練習、3)その他モデル会話中に現れる有用な表現についての解説で構成される。この教材を平成28年度後期において試用した。その結果、教材中に提示された表現と学習者自身が現実の会話で耳にした表現との違いについての質問が数多く出され、周囲で用いられる日本語に対する学習者の観察意欲を高めることに一定の成果があったことが窺われた。授業後に実施したアンケートでは、各課とも「Very helpful」または「helpful」と評価され、また「基本表現」として口頭練習を行ったものだけでなく、モデル会話中の表現をそのまま使ってみたという報告もあり、開発した教材が一定の評価を得たことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では平成29年度に試作教材を作成する予定であったが、平成28年度中に作成し平成28年度後期に第1回試用を行い、教育効果を検証することができた。モデル会話・タスク作成の根拠となる基礎データ収集がまだ十分ではないが、教材の試用と同時にデータ収集を進め、試用結果と基礎データ双方の分析に基づいた改変を加えて、より妥当性の高い教材へと改良していくことが可能になったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
教材の改良を進め、さらなる試用を行い、教育効果の検証を行う。同時に、研究室における会話データの収集と分析を行い、対象とする学習者のおかれた環境により適合したものとなるようモデル会話、タスクの見直しを行う。正規のコースでの使用も想定して、最終的には全12課の教材とすることをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
1)研究打ち合わせのための出張を計画していたが、その一部について、当年度は他の用件での出張に重ねて実施することができた。 2)他の研究費で購入した物品をそのまま使用することができたため、新たに購入する必要がなくなった。 3)収集した会話データの入力のための人件費を計上していたが、当年度は実施しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
試作の段階でも教材印刷・製本を行う。 会話データの収集と入力作業を前年度分も含めて実施する。 英語による翻訳・解説部分のネイティブチェック、および中国語翻訳を行う。
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