研究課題/領域番号 |
16K02795
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
木戸 光子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20282288)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 作文 / 誤用 / 文章構造 / 中上級日本語学習者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、上級日本語学習者の作文における文章レベルの誤用分析を行い、上級日本語学習者対象の文章表現辞典を開発することである。本年度は以下の3つを行った。 まず、作成した作文データベースの誤用分析を進めた。「誤用」・「非用」を分析する際、文内で処理できる誤用と文を超えた文章レベルで処理する必要のある誤用の2種類の誤用について分析を進め、その成果を国内学会および国際学会で発表した。 次に、「文章表現辞典」の前段階として、学習者・教師に使いやすい形での提供を模索し、ウェブサイト上で試作版を公開した。大学で日本語作文を留学生に教えている日本語教師5名の協力を得て、日本語学習者の作文の誤用を踏まえて作文ガイドブックとしてウェブ公開版試作版を作成した。9つの学習項目を選定し、中上級作文において文章レベルでないと処理できない誤用と見られる文法・文体を特定し、それらの一部をまとめて学習項目ごとに説明したものをパワーポイント教材にまとめ、パスワード付きでウェブサイトに公開した。シンポジウムおよび学会・研究会でこの成果を発表してウェブサイトを紹介し、閲覧・使用希望者には個別にパスワードを通知して見られるようにした。 さらに、文章レベルの誤用分析のための作文調査を実施するにあたり、文章レベルの誤用の実態を精査する必要から、作文データベースのための追加調査を行った。20名の中上級学習者に作文調査を行い、課題作文作成・アンケート記入の後で個別にインタビューを行い、作文学習や文章観などを聞いた。その結果、文章レベルの誤用には誤用未満ともいえる違和感のある作文が含まれること、文章の種類として教師が考えるのとは異なる文章を想定して作文作成を行っている学習者がいることがわかった。文章レベルの「誤用」と見られる作文が作成される一因として学習者の持つ文章観が影響していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
作文データベース主体で分析と文章表現辞典作成を進めようとしてきたが、データベースだけでは学習者に有用な記述内容にならないことがわかった。そこで、協力者として日本語教師の専門的知識を提供してもらって9つの学習項目に限定してウェブ版公開を行ったが、データベース主体の記述に比べて、記述内容の検討に時間がかかった。 それと並行して、文章レベルの誤用分析を進めるために作文調査を行ったが、課題作文作成・アンケート・インタビューを全員に行うには準備や事後処理も含めて予想以上に時間と労力がかかった。100名に調査する予定だったが、現時点では20名への調査が終わっている。
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今後の研究の推進方策 |
科研延長を申請し、学習項目を精選した上で、作文データベース主体の記述内容も含めて文章表現辞典を完成する。また、文章レベルの誤用分析のための作文調査を進め、調査で収集した課題作文のデータベース公開版作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加の作文調査がまだ終わっていないため、調査にかかる費用を残した。科研延長申請が受理されたので、残額は2019年度の作文調査に使用する予定である。
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備考 |
中上級日本語作文用「作文ガイドブック」パワーポイント教材をパスワード付きで公開しています。
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