研究課題/領域番号 |
16K02798
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
ボイクマン 総子 (椙本総子) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50370995)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 留学 / 中間言語語用論 / 断り / 第二言語習得 / 第二言語環境 / スピーチレベル / 学習者 / 語用論的能力 |
研究実績の概要 |
本研究は、留学における語用論的な発達過程を検証することである。本研究では、特に「断り」という発話行為に注目し、データの収集と分析を行っている。 今年度の実績としては、具体的には、対話相手との親疎・上下関係(教授と学生、上司と部下、親しい先輩と後輩、親しい同学年の友人、親しくない同学年の友人)、負担の度合いの異なる12種類の「依頼に対する断り」「勧誘に対する断り」「提案に対する断り」について、留学先からの帰国直前の学習者の音声データを34名分を新たに収集した。うち、24名が半年、残り10名が1年の留学の学生である。 すでに収集している日本語母語話者62名、来日直後の学習者のデータ45名分と合わせると、本研究の目的 (1)留学という第二言語環境の語用論的能力の習得が促進されるのか、(2)断りをめぐるスピーチレベル、意味公式、言語形式が、どのような語用論的な発達を経るのか、(3)断りをめぐる語用論的能力の習得が習熟度の違いによりどのような過程を経るのか、解明することができると考えられる。 また、上述の目的を達成するために、中間言語語用論の先行研究の国内外の先行研究文献調査も行った。 さらに、本研究に関して2件の学会発表とそのプロシーディングスの執筆、及び、学習者のスピーチレベル習得の発達段階についての論文を2本投稿した。1本は掲載済み、1本は査読結果を待っている状態である。尚、論文執筆は継続して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中間言語語用論の先行研究について、「断り」「スピーチレベル」「言いさし」「留学」に関する国内外の先行研究の文献調査についてはほぼ完了した。 本年度に収集した学習者音声データ(来日直後45名、帰国直前34名)の文字起こしも完遂している。現在は、スピーチレベルのコーディング、及び、意味公式とその言語形式に関するコーディング作業を行っている。 研究成果の公開に関しては、学習者のスピーチレベルの発達についての論文を執筆し、2018年4月に公開されている。さらに、査読結果を待っている論文と、執筆中の論文がある。
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今後の研究の推進方策 |
日本語母語話者のデータも、学習者の留学前後のデータも十分あるため、そのデータをもとに、「スピーチレベル」と「意味公式」「言語形式」の面から、学習者の「断り」の特徴について、「初級後期」「中級前期「中級後期/上級」の3レベルで、比較対照したい。そして、(1)日本語母語話者の断りと、習熟度別の学習者の断りを比較し、習熟度別の問題点を明らかにする、(2)学習者の断りについて、留学直後と帰国直前の、データを比較し、外国語環境と第二言語環境の違いによる語用論的能力の特徴を解明する、(3)断りをめぐる語用論的能力は留学当初の習熟度の違いによりどのような過程を経るのか明らかにする、ことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(状況)海外において学会発表を行う計画をしていたが、データ収集と論文執筆に専念したため、旅費が予想よりかからなかった。 (使用計画)研究成果を国内外の学会で発表する予定で、すでに海外での発表も決まっており、その旅費経費に充てる予定である。
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