研究課題/領域番号 |
16K02803
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
佐々木 泰子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (20251689)
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研究分担者 |
楊 虹 鹿児島県立短期大学, その他部局等, 准教授 (20571607)
加納 なおみ お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (20726880)
船戸 はるな お茶の水女子大学, 文教育学部, アカデミック・アシスタント (90772822)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | LINE / コミュニケーション / 相づち / 会話の開始・終結 / 打ち言葉 / マルチモーダル |
研究実績の概要 |
今年度は①関連の深い著書、文献を精査し、研究動向の整理・確認、②①に基づいた研究方法の精緻化、③分析に適したデータの収集・整理・保存の方法の検討、④分析に必用なデータ数、収集時期、収集方法の確認、⑤各自の分析観点について話し合いを行った後、分析の方向性・妥当性について相互チェックを行った。次に、研究倫理審査の申請を行い、承認を得たのち、データの収集を行った。 データは、協力者及び会話相手の承諾が得られたLINEの会話の開始から終了までのスクリーンショットである。会話参加者の属性及びデータ数は日本語母語話者大学生10人及び中国語母語話者大学生4人及びタイ語母語話者大学生4人が、それぞれLINEで3人の友人と1対1で交わした300メッセージのトーク履歴を収集し、データベース化した。 上記のデータを基に論文1本、学会発表2件を共同で行った。論文は「「打ち言葉」の句読法‐日本人大学生のLINEメッセージを巡る一考察」(1)、学会発表は「LINEにおける会話の開始・終結について」(2)、及び「LINEの会話における聞き手の行動‐相づちの分析から‐」(3)というタイトルである。(1)からは、①伝統的な句読点の不可視化と、②句点マーカーのマルチモーダル化、(2)からは、通常の会話で見られる開始部・終結部は半数以上の会話で見られないこと、(3)からは、LINEの会話においても,相づちにより話し手の発話を受け止める行為は重要であること、「聞いている」機能がほとんどみられず半数以上が「感情の表出」機能であること、相づちと実質的発話をともに送信することによって複数の発話連鎖のある談話展開を認識しやすくしていることなどの結論が得られた。 以上今年度の研究から新たなコミュニケーション手段としてのLINEにおけるコミュニケーションの普遍性と新たな創造的な言語使用の一端が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究実施計画の通り、①関連の深い著書、文献を精査し、研究動向の整理・確認、②①に基づいた研究方法の精緻化、③分析に適したデータの収集・整理・保存の方法の検討、④分析に必用なデータ数、収集時期、収集方法の確認、⑤各自の分析観点について話し合いを行うことができた。 得られたデータを基に論文1本、学会発表2件を共同で行った。論文は「「打ち言葉」の句読法‐日本人大学生のLINEメッセージを巡る一考察」(『お茶の水女子大学人文科学研究』)、学会発表は「LINEにおける会話の開始・終結について」(お茶の水女子大学日本言語文化学研究会)、及び「LINEの会話における聞き手の行動‐相づちの分析から‐」(社会言語科学会)というタイトルである。 上記の通り、今年度計画していたすべての項目を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
定例研究会を実施するとともに追加データの収集を行う。 各自の分析結果の持ち回り報告を行い、報告に関して全体討論により個人の研究の深化を図る。その際、主な分析の観点は以下の四点である。①会話分析の観点からの分析:どのような言葉が使用され、どのようなルールに基づいてLINEの会話の秩序が組織化されているのかを質的及び量的に解明する。②マルチリンガル・マルチモーダルの観点からの分析:多言語・複言語主義を背景とした「トランス・ランゲージング」の視点から言語使用及び言語の切り替えのメカニズムを解明する。③LINEの特性からの分析:コミュニケーションがLINEの機能や構造から受ける影響について検討する。④母語話者の観点からの分析:母語の言語ルールの影響について検討する。 アジア言語を中心に研究を行っており、今後は、研究成果を国内のみだけでなく中国、韓国など海外での学会発表を通して積極的に公開、意見交換を行うことを目指す。
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