研究課題/領域番号 |
16K02805
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
橋本 ゆかり 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (40508058)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 第一、第二言語 / 子ども / 認知言語学 / 用法基盤モデル / 言語構造の構築 / 言語習得プロセスとメカニズム / スロット付きスキーマ / ピボット・スキーマ |
研究実績の概要 |
本研究は、言語構造構築のプロセスとメカニズムの解明を目指し、課題を設定している。本研究は、「スロット付きスキーマ合成仮説(以下、CSS仮説)」(橋本2011)の妥当性を検討する段階に当たる。平成28年度は、課題1と課題4に取り組む予定であった。課題および小課題ごとに研究の進捗状況を次に述べる。 課題1-1)L2児の研究-これまでに明らかになっていない文法カテゴリーにおける習得プロセスを明らかにし、CSS仮説の妥当性を検討する。この課題については、他のカテゴリーではないが、別の項目に焦点を当てて研究を進めた。助詞「に」「で」の習得に関する研究を論文にまとめ、学会論文集において発表した。さらに述語形の習得についても研究を行い論文にまとめた。著書において発表する予定である。 課題1-2)文構造の複雑化に伴う習得の段階性を明らかにする。この課題については、これまでに発表したいくつかの研究成果を統合した。著書において発表する予定である。 課題1-3)類型論的に異なる言語を母語とする学習者のプロセスについて追究する。この課題については、今後進める予定である。 課題4)L2児の言語獲得には、どのような環境が必要なのか、どのような教授法や教材が必要なのかを具体的に示す。この課題については、L2児に対する教授法について著書を出版した。加えて、教員や研究者向けの講演や講義を複数回行った。小学校においてL2児を教育する教員に必要な能力は何かについて、国際大会で発表した。 その他、課題遂行の基盤となる研究と延長線上に位置づけられる研究を進めた。用法基盤モデルの誕生の背景と特徴をまとめ、筆者の研究の位置づけと意義を論文において示した。これは課題1、2に関連する。さらにCSS仮説を援用し、L2児の書き言葉の研究も行った。作文における理由表現の誤用とその原因を言語発達の観点から追究し、フォーラムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複雑な言語構造の構築について追究するためには、これまでの研究知見をまずはまとめることが重要であると考え、平成28年度は、橋本(2011)以降の複数の研究成果を統合することに時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
橋本(2011)以降の複数の研究知見を統合した学術書を出版する予定である。まずはこれを完成させることに力を注ぎたい。これは課題1に関する研究である。さらに、平成28年度に追究することのできなかった小課題1-3についても研究を進め、L2児の言語構造構築プロセスについて追究を進める。課題2、課題3についても研究を進め、L1児、L2児、L2成人の共通性と差異を明らかにする予定である。これら言語習得のプロセスとメカニズムに関する研究において明らかになったことを教育現場で生かせるように学会や講演会などで発表し、発信していくつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究知見を著書としてまとめる作業が多かったことから、現場での調査が遅れたり、学会参加が少なかったりしたことに起因する。
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次年度使用額の使用計画 |
1. 研究成果を発表するために、あるいは最新の研究内容を学ぶために、複数の学会に参加する。欧州の国際大会で研究発表することが既に決定しているため、高額の海外渡航費が必要である。2. 海外の最新の図書を購入する。海外の図書は高額である。3. 執筆活動等に必要な文房具を購入する。4. 研究補助を依頼し、謝金を支払う。
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備考 |
横浜市教育委員会との共同研究「リーフレット『これから求められる教員の資質・能力の育成-グローバル化に向けた教育を実現させるための人材育成の鍵-』」(橋本ゆかり他 2017)
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