本研究は、言語構造構築のプロセスとメカニズムの解明を目指し、課題を設定している。本研究ではL1およびL2の子ども、およびL2の大人について、「スロット付きスキーマ合成仮説(以下、CSS仮説)」(橋本2011)の妥当性を検討する。平成30年度は、平成29年度に取り組むべき課題に関する研究を行いつつ、平成30年度に行う予定であった研究を進めた。課題および小課題ごとに研究の進捗状況を次に述べる。 課題1. L2児の研究-文法カテゴリーの習得プロセスの解明と、CSS仮説(橋本2008、2011)の妥当性の検討。CSS仮説(橋本2008、2011)に関する研究について、L1幼児データと比較し、研究内容を深めた。述語形、複雑な文、複文がどのように習得されていくのかについて、研究ごとの結果を統合し、著書を出版した。課題2. L1児の研究―文法カテゴリーごとの習得プロセスの解明とCSS仮説(橋本2008)の妥当性の検討。L1幼児のデータを再分析し文法習得の研究を進めた。結果はL2児と比較するための対照データとした。課題3. L2大人の研究-文法カテゴリーごとの習得プロセスの解明とCSS仮説(橋本2008、2011)の妥当性の検討。L2児、L1児、L2大人の3者の違いを追究し、著書にまとめた。2019年に出版する予定である。課題4. L2児の言語獲得に必要な環境。これまでの研究成果に基づいて講演を行った。日本語教師に向けて研修会も行い社会貢献した。さらに認知言語学の理論を実践で生かせるようなタスクを考案し、国内および海外においてタスクを試みた。タスクの効果について学会において発表した。また、さまざまなタスクをまとめ教材開発を進めた。
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