本研究は、日本語学習者の誤用が多く見られる「自他動詞構文」を取り上げ、学習者に共通する言語的特徴(中間言語)や誤用の要因を明らかにするため、複数の母語(英語、中国語、ロシア語、ハンガリー語、イタリア語)の学習者グループの言語表現(各母語と学習言語である日本語)と日本語母語話者の表現との比較分析を行うものである。分析には、各言語における自他動詞構文の特徴を記述、発話場面によって異なる自他動詞選択の傾向を質問紙調査等で検証、自他動詞選択における事態認知傾向を視線分析装置で分析、という3つの手法を用いている。 本年度は最終年度として、実験調査で得られた言語データを分析・考察し、その成果を発表することが中心であった。①調査データの分析、②各言語結果の比較・考察、③成果発表へとすすめていった。①は調査方法によって手順が異なる。質問紙調査においては、母語話者と学習者、そして言語間で比較可能となるように、調査データを共通の基準に基づいてコーディングを行った。質的データを量的データとして計算できるものにする作業である。視線データについては専用のソフトを用いて分析を行った。②では、各言語担当者との合同検討会として、言語内・言語間で比較したデータを元に議論する場を設けた。その中で、言語特有の傾向や学習者に共通する傾向などを考察した。③では、本研究の成果報告として、国際学会での研究発表や、国内外の雑誌への論文投稿を行った。
|