研究課題/領域番号 |
16K02809
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉村 泰 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (60324373)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 第二言語習得理論 / 文法習得 / ポートフォリオ / 学習データベース / 中国人日本語学習者 / 母語転移 / 対照研究 / 縦断的研究 |
研究実績の概要 |
本研究は中国語を母語とする日本語学習者が大学に入学してから卒業するまでの日本語学習過程を記録して、会話・作文・文法などの総合的なデータベースを構築するとともに、縦断的な日本語文法習得研究を行うものである。被験者は2016年9月に上海師範大学外国語学院日語系に入学した日本語専門の学生26名である。海外研究協力者として上海師範大学の張善実先生にデータ収集の補助をしてもらう。 本年度はまず、これら26名の学生に研究の趣旨を説明し、データは研究用にのみ使用すること、個人の尊厳にかかわるような扱いはしないことを確約し、全員から同意書を得た。その後、2016年の秋学期間における学生の宿題・小テスト・期末試験・会話のデータを収集した。データの収集に当たっては、26名の被験者ごとにデータを整理するポートフォリオ型の整理をした。データは、各個人ごとの習得状況が追いやすくするとともに、他の被験者との比較もできるように「01-0001」(被験者番号1番の1回目のデータ)のようなタグを付け、エクセルの該当箇所をクリックすればすぐに元データが画面に現れるようにした。 また、この26名の被験者と比較するために、名古屋大学の日本人(日本語母語話者)や他の中国の大学の学生に文法習得に関するアンケート調査やコーパス調査を行った。今年度は特に指示詞(こそあ)と時節を表す「~前」、「~後」、「~時」の誤用について重点的に調査した。これにより、日本語学習者にとって誤用を犯しやすい部分と誤用を犯しにくい部分を区別した。この結果をもとに、今後この結果が本研究の被験者にも表れるかどうかを探っていき、日本語文法の教授法に資する研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上海師範大学における日本語学習者のデータが順調に収集できているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は昨年度に引き続き、上海師範大学の日本語学習者のデータを卒業時まで収集する。被験者の中には途中で大学を退学したり、他学科へ転学する人もいるが、その人に対しては追跡調査をしないこととする。また、4年時には就職活動のため、授業に出席しない学生も増えるが、短時間でできる文法テストなどを活用して可能な限りデータを収集するようにする。そのために海外研究協力者である上海師範大学の張善実先生とは定期的に連絡を取り合っていく。 (1) 学習者のデータ収集(1年生後期~4年生後期) ・昨年度に引き続き日本語学習者の学習データベースを作成する。 (2) 他大学での文法に関するアンケート調査 (3) 学習者の文法習得の分析 ・前年度に引き続き学習者の文字表記や文法などの日本語習得について分析する。1年後期には学習する文法事項も増えるが、特に格助詞・ボイス・テンス・アスペクト・指示詞の習得を重点的に見ていきたい。もちろん他の文法項目についても随時チェックして、誤用の傾向を探っていく。それによって得られた結果は教師や学生にフィードバックするとともに、学会でも発表して広く公表する予定である。また、収集したデータは個人情報にかかわらない範囲で一般公開し、広く研究に利用できるようにする計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は上海師範大学における日本語学習者のデータ収集と整理をすることに集中し、その分析結果をもとにした海外の他大学でのデータ収集を減らし、旅費の使用が少なめになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は上海師範大学で収集したデータの分析を進め、上海師範大学以外の日本語教育機関での資料収集を進め、その旅費に支出する予定である。
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