研究課題/領域番号 |
16K02810
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
松井 孝彦 愛知教育大学, 教育実践研究科, 講師 (20758388)
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研究分担者 |
松井 千代 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 非常勤講師 (50770038)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本語多読 / 日本語指導 / 外国籍児童 / 取り出し指導 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「小中学生の日本語能力の変化及び日本語の読みに対する情意面の変化を明らかにすること」と「多読用図書の難易度設定に関する基準の設定及び多読用図書リストの作成」の2点である。この目標を達成するために、平成29年度では当初の予定通り県内の小学校1校での日本語多読の実践を行い、小学生の取り組みの様子を分析することと、「多読用図書選定・リスト作成」を行った。 日本語多読の実践に関しては、県内の小学校1校にて6月から3月までの間行った。6月から10月上旬までは、授業後の学習支援授業の中で15分~20分間(小学2年生2名は週1回、小学3年から5年5名は週2回)、多読活動に取り組んだ。10月中旬から3月までは、通常の時間帯における取り出し指導の中の、最初の5分~10分間で多読活動に取り組んだ。 活動を開始した当初の6月には、小学2年生は本を読もうとしなかったので読み聞かせから活動を始めた。9月には音読をするようになり、次第に休憩時間中にも取り出し教室に来て本を読むようになった。小学3年生から5年生は、6月から気に入った絵の本を読んでいたが、感想が「楽しかった」等一言しか書けなかった。しかし、本を読み慣れるに従い、好きなシリーズを読み続ける等個人で目標をもって本を読むようになり、読後の感想についても理由を付け加えたり、個人の生活経験と照らし合わせた内容を書いたりすることができるようになった。また、感想用紙に書かれた言葉を分析すると、本から借用した言葉を自分の気持ちや考えを表現する言葉として用いている姿も見られた。 以上のことから、アンケートの分析やテストによる量的な分析は行っていないものの、観察からは、本を読むことに対する興味が高まるに従い、日本語の能力が高まっているのではないかと思われる。 本のリストは実践校用には作成済みであるが、公開用を現在作成しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度からの継続課題と、当初計画をしていた平成29年度の計画については、「(1)多読用図書の難易度基準作成に関する研究」「(2)児童用図書(市販本)の語彙、表現、語数分析」「(3)児童用図書の難易度レベルごとの本の分類と整備」「(4)Reading能力及び速読力を測定するための文章問題の作成」「(5)日本語を読むことに関するアンケート調査」の5点であった。この中で、(4)を除く4点は研究が予定通り進行しており、平成30年度にまとめをし、作成予定のホームページや学会の場にて広く発信をしていく予定である。 (4)に関しては、現在小学生に対する日本語能力測定試験を収集、分析中である。この試験のサンプル数は非常に少ないことから、実際の作成に関して現在検討を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、協力校2校において日本語多読の実践を行う。そして、その実践を通して、本研究の目的である「(1)小中学生の日本語能力の変化及び日本語の読みに対する情意面の変化」「(2)多読用図書の難易度設定に関する基準の設定及び多読用図書リストの作成」について、その成果を公表する。 多読用図書選定・リスト作成については、平成29年度の活動を踏襲する。そして、目的の(2)に関するまとめを行う。 テスト・アンケートの作成については平成29年度からの課題であるが、「Reading能力」「速読力」を測定するための文章問題と「語彙習得テスト」の試案を作成し、連携協力校にて取り組んでもらう。そして、テスト問題を精査しつつ、多読実践の効果として、日本語能力に変化があるかどうか、量的な検証を試みる。なお、質的な分析も行い、学会にて発表をする予定である。日本語を読むことに関するアンケートにについては、多読実践の前後に児童生徒に取り組んでもらい、日本語を読むことに関する情意面の変化を量的に分析し、同じく公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、多読実践用の図書購入冊数が少なかったためである。平成29年度には、協力校にて700冊の多読用図書を用意する予定であったが、現状では500冊程となっている。これは、協力校が年度当初には小学校1校のみであったため、その小学校の児童に追加購入をしてほしい図書に関する希望を尋ねたが回答のフィードバックが少なく、図書の選定が十分にできなかったことがその原因である。 平成29年度末までに協力校が小学校2校となった。また、日本語多読活動に取り組んでいる児童の数は30名を超えている。これらの児童から「読みたい本」に関する希望を尋ね、当初予定である各校700冊の蔵書を目指して、図書を選定し、購入していきたい。
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