研究課題/領域番号 |
16K02814
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
伊月 知子 愛媛大学, 国際連携推進機構, 准教授 (30369805)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 「満洲国」 / 日本語教育 / 植民地教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本語教育が植民地政策の一翼を担った「満洲国」を対象とし、当時の教育実態を明らかにするとともに、その後の中華人民共和国における日本語教育の確立に与えた影響を解明することを目的とする。とくに学術的な特色として、政策としての評価からは見えてこなかった、教育による人的育成の効果について検討し、日本語教育の歴史的な功罪について“人”への影響という側面からの再評価を試みる点が挙げられる。 具体的な研究方法として、1)国内外に現存する資料について、日中の研究者と共同して収集と整理にあたり、同時に存命中の当時を知る関係者への聞き取り調査を行う、2)収集した資料や聞き取りデータを整理し、分析を行う、3)上記の活動に並行して、得られた分析結果をもとに、中国側研究者との意見交換、国内外の学会等での発表を通じて、日中双方の研究者からの研究成果への率直な意見・指摘等を請う。 平成28年度はまず、効率的に資料収集と聞き取り調査を進めるため、日本と中国における研究協力者との連携体制の構築に努めた。新たに日本側研究協力者1名(宮城学院女子大学人文社会科学研究所客員研究員・宮脇弘幸先生)を得て、日中双方の研究協力者と協議し、具体的な実施計画を立てた後、各自の収集・調査活動を開始した。また、研究代表者はこれまでに収集した資料をもとに、「満洲国」後期の日本語教育に対して、日本や他地域からの評価及び日本(内地)への影響について考察し、その成果を中国と韓国の関係学会で報告し、また論文一編にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記した通り、おおむね研究計画通りに進行している。 具体的な達成内容として、1)研究協力者と共同して、「満洲国」期の教育関係資料及び戦後初期の刊行物、研究雑誌、同窓会冊子、回想録等の収集を行った。これまで研究代表者だけでは収集しきれなかった日本国内に現存する関係資料の収集を重点的に行い、当時の刊行物や戦後の同窓会冊子等の閲覧、複写等を行うことができた。2)資料の収集と並行して、それらに対する分析を進めた。とくに戦中・戦後の教育雑誌から、「満洲国」後期から戦後に至る時期の「満洲国」教育に対する評価を巡る議論の推移を明らかにし、戦後への影響について考察した結果を、国際学会において発表し、日・中・韓の関係分野の研究者に広く意見を仰いだ。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は引き続き国内外の資料収集を行うとともに、研究協力者と共同して、存命している関係者への聞き取り調査を行う。これらの調査活動について前年に綿密な打合せをしたことにより、各自で分担して実施し、量・質ともに効率的に成果が得られると見込まれる。同時に、研究代表者は収集した文献資料及びデータの整理を急ぎつつ、それらに対する分析を進める。また、分析と並行して中国側研究者との意見交換を行い、分析の正確さや客観性を保つように努める。整理した資料とデータから得られた分析結果について、国内外の関係学会において途中経過も含めて発表を行い、国内外の研究者から広く意見を集める。それにより、資料の不足や分析・考察への疑義が挙げられた場合は、資料の再検討や考察の修正も視野に入れて適宜資料収集や分析のやり直しを行い、最終年度へ備える。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」が910,741円生じたが、これは中国東北部(大連ほか)での資料収集と戦後の関係者への聞き取り調査を行う予定だったが、今年度は日本国内の資料収集を重点的に進めるために来年度へ延期したこと、またそれに伴う人件費・謝金と必要機材の購入等も繰り越しになったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の次年度使用額は平成29年度における現地調査にあてる予定である。前年に延期を決めた中国東北部での資料収集と聞き取り調査については、中国側研究協力者と次年度の実施をすでに計画済みである。
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