研究課題/領域番号 |
16K02816
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
フォード丹羽 順子 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (70286201)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本語学習者の読解 / 主語の特定 / 主語の省略 / 助詞に関する知識 / 意味の整合性 |
研究実績の概要 |
日本語学習者が日本語の文章を読む際に困難を感じる点のひとつに、主語の特定があることがわかった。日本語の文章では、主語が述語の近くになかったり、主語が省略されていたりすることも多いことにその原因がある。 中級学習者に生の日本語文章を読んでもらう調査を実施した結果、中級学習者は文の中に「が」や「は」があると、それらの前の要素(名詞)を主語の候補にする、文の中に「が」も「は」もないと、述語と同じ文の中にある要素(名詞)を主語の候補にする、ということがわかった。そこで、主語が省略されていて、中級学習者が主語の候補にするだろうダミーの要素(名詞)が含まれている調査文を考え、調査文章を作成し、中級学習者と上級学習者に読んでもらった。調査は、調査文章を読んで、理解した内容と主語を特定した理由を説明してもらう、という方法で行った。 その結果、学習者がどのように主語を特定して読んでいるのか、また、中級学習者と上級学習者とで特定をする際に活用する知識にどのような違いがあるのかを明らかにすることができた。学習者は主語の特定に際して、助詞に関する知識を活用して主語を特定するが、特定できなかったり、その特定を強化したりするために、意味の整合性を考えて特定するということがわかった。 助詞に関する知識を活用して特定する際には、中級学習者は「から」や対象(原因)を表す「に」については正しい知識を活用するが、「が」や「は」については、これらの前の要素(名詞)を主語だと考える(意味が成立しない場合は主語は他にあると考える)、という間違った知識を活用していた。一方、上級学習者は正しい知識を活用するが、「には」(「~するにはいい」)のような場合には、中級学習者と同様に、「は」の前の要素を主語だと考える、という間違った知識の活用もあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本語中級学習者と上級学習者に対して、読解調査を実施し、データを収集することができた。そして、研究実績の概要で述べたように、学習者が日本語の文章をどのように読んでいるかについて、ひとつの結論を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に実施した読解調査の結果から、学習者は、日本語の文章を読んで主語を特定する際に、助詞に関する知識を活用して主語を特定するが、特定できなかったり、その特定を強化したりするために、意味の整合性を考えて特定するということがわかった。 中級学習者と上級学習者の読解過程を比べると、上級学習者は常に助詞に関する知識を活用して主語を特定していたのに対し、中級学習者は助詞に関する知識を活用できないで、意味の整合性を優先して主語を特定することが多かった。 そして、助詞に関する知識を活用して特定する際には、中級学習者は「が」や「は」の前の要素(名詞)を主語だと考える(たとえば、従属節における「が」の前の名詞を、主文の述語の主語だ考える)という、間違った知識を活用していたが、上級学習者は、従属節内の主語と主文の述語の主語について、助詞に関する正しい知識を活用し、主文の述語の主語を正しく特定していた。中級学習者からは、「が」や「は」についてはよくわからないため、これらに関する知識を活用することもできないというコメントもあった。 中級学習者にとって、従属節内の「~が」に注意を向けて読むことは、読解において主語をを正しく特定し、読解能力を伸ばしていくうえで重要であると考えられるので、そのためにどのような読解指導や教材(練習方法)が効果的かを考え、その指導を実践し、教材作成を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
全額を使用することができなかったためで、最終年度に使用する。
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