昨年度、日本語学習者が日本語の文章を読む際に、どのように主語を特定して読んでいるのかについて、中級学習者と上級学習者の読解過程を調査し、その結果を論文として発表した。中級学習者と上級学習者の読解過程を観察した結果、上級学習者が助詞に関する正しい知識を活用して主語を特定しているのに対し、中級学習者は助詞に関する知識を十分に活用できていなかったり、間違った知識を活用していたりして、意味の整合性を優先しているという実態が見えた。 そこで、中級学習者に対してどのような指導を行ったら、読解能力を養成することができるかを、日本語の授業において、試みた。調査結果から、中級学習者は文の中に「が」や「は」があると、それらの前の要素(名詞)を主語の候補にしたり、文頭にある要素を主語の候補にするということが明らかになっており、実際の読解授業においてもそうであった。 そこで、「は」の前は主語だとは限らないこと、「~では」のような場合は「で」の意味に注意を向けること、主語が省略されていることがよくあるので、前の文に戻って、主語を探すことを指導した。 学習が進んでいく中で、徐々にではあるが、次のような習得が観察された。文の要素が省略されている場合、そのことに気づくことができるようになった。そして、前の文に戻って省力された要素を探して特定することができるようになった。
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