本研究は、これまで研究代表者らが行ってきた日本語学習者の言語行動に関する探索的研究を踏まえ、新たに「日本語学習者談話の有効性」に着目した発展的研究に位置する。本研究は、多様な日本語使用者による日本語談話の価値を問い直すために、日本語学習者が「第三者言語接触場面」および「相手言語接触場面」においてどのような言語行動を獲得するのかを明らかにすることを目的としている。 最終年度は、平成28年度および29年度に整備を行った「第三者言語接触場面」と「相手言語接触場面」における自然談話の文字化データを用いて、次の3点の研究成果を学会等で発表した。1)「相手言語接触場面」と「第三者言語接触場面」の自然談話データにみられるジェンダー指標形式を比較分析し、「相手言語接触場面」でより日本語のジェンダー規範を順守しようとする言語使用の実態が見られ、「第三者言語接触場面」の方が母語話者の言語実態に近い傾向があることを明らかにした。2)1)と同じ談話データを縦断的かつ横断的に観察・分析し、確認要求表現のバリエーションの広がりと変化を明らかにした。3)「相手言語接触場面」の談話データを用いて、談話管理能力の変化を縦断的に分析し、談話進行における役割の変化や複層的な談話進行の実際を明らかにした。 本研究を通して、接触場面の研究は、日本語学習者だけではなく、日本語教育に携わる教え手にとっても意義があることがわかった。さらに、今後の研究展開として、各接触場面の特性をさらに分析し、日本語教育に有効に取り入れるための方法論の必要性が示唆された。
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